2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピン分解超高分解能光電子分光装置の建設と磁性表面薄膜の研究
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10J02771
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高山 あかり 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピン分解光電子分光 / 表面ラシュバ効果 / トポロジカル絶縁体 |
Research Abstract |
これまでに建設を進めてきた小型モット検出器を用いたスピン分解超高分解能光電子分光装置の校正を行った。小型モット検出器のスピン偏極度測定効率を評価するため、表面ラシュバ効果をもつAu(111)面を用い、スピン分解角度分解光電子分光(ARPES)実験を行った。得られたスピン分解スペクトルをフィッティングすることで有効シャーマン関数S_<eff>を見積もった結果、S_<eff>=0.07と決定した。 建設した装置を用いて、スピン軌道相互作用によってバンドが分裂する(Rashba効果)ことが知られている、V族半金属Biの表面電子状態についての研究を行った。今回、Bi表面のブリルアンゾーンで波数を精密に指定してスピン分解測定を行った結果、Biのホール面では、通常のRahba効果とは異なり、面内方向のスピン偏極率の大きさがΓ点を中心にして左右のホールバンドで非対称であること、面直方向に大きなスピン偏極率をもち、その方向はΓ-Μ軸で反転していることが明らかになった。また、Μ点を中心にした電子面では、Bi薄膜の膜厚に依存してスピン偏極度の大きさが変化することを明らかにした。このことは、Si/Bi界面ではBi表面と同様な構造を持つ可能性が高いことを示唆する結果となった。これらの結果は米国物理学会誌Phys.Rev.Lett.及び米国化学会誌Nano Lettersに掲載された。また、国内外の学会にて以上の結果を発表した。 この他、近年精力的に研究が行われているトポロジカル絶縁体についてもスピン分解ARPES実験を行った。トポロジカル絶縁体Bi_2Te_3において、波数を細かく指定して測定した結果、六角形のフェルミ面において、面内方向のスピンヘリカル構造の他、Γ-Κ軸で垂直方向のスピンを持つことを明らかにした。円形のフェルミ面を持つTlBiSe_2でも同様の実験による比較を行い、フェルミ面の歪みによる影響(ワーピング効果)で垂直方向のスピンが生じるということを実験的で初めて証明した。以上の結果は米国物理学会誌Phvs.Rev.Lett.に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高分解能スピン分解光電子分光装置の建設・改良によって、V族半金属Biや最近非常に大きな注目を集めているトポロジカル絶縁体について、その表面構造やスピンを含めた電子構造を明らかにしてきた。これらの系においては、装置の高分解能化によって微細なスピン構造を観測・議論することが出来るようになったため、当初の計画以上に新奇物性の解明に貢献している。
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Strategy for Future Research Activity |
Biは通常は半金属であるが、極限まで薄くした場合、トポロジカル絶縁体となることが理論的に予測されている。また、Biと同じV族半金属であるSbは、それ単体でRashba効果とトポロジカル相が共存する物質であり、その電子構造については未だ包括的な理解は得られていない。今後の研究では、BiやSbにおけるトポロジカルな性質について、基板や膜厚の影響を考慮した実験を行い、スピンを含めた電子構造の観点から議論を行う。また、Bi/Si界面でもRashba効果が存在する可能性があるという今年度の研究成果を発展させ、金属-半導体界面における新たな界面物性の探索及び解明を行う。
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Research Products
(9 results)