2010 Fiscal Year Annual Research Report
大気波動を介した金星熱圏‐下層大気結合の数値シミュレーション
Project/Area Number |
10J02786
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
星野 直哉 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金星 / 熱圏 / 中間圏 / 大気波動 / ケルビン波 / ロスビー波 / 熱潮汐波 / 大気大循環モデル |
Research Abstract |
本研究は、大気波動を介した金星下層大気(高度<70km)と熱圏(110km)の大気結合過程を、大気大循環モデル(GCM)を用いて解明することを目的としている。本年度は、GCMから得られたシミュレーション結果と観測との比較を目的に、金星の高度95km付近で発光するO2-1.27um大気光の一次元化学モデルを作成し、GCMと組み合わせて下層大気起源の大気波動の大気光分布への影響を見積もった。その結果、雲層起因(50-70km)のケルビン波が高度120km付近まで伝搬し、大気光の発光領域・発光強度に4日周期の時間変動を生じさせることを示唆した。本結果と地上望遠鏡・探査機による大気光観測の結果を比較することで初めて理論-観測の両面から金星超高層大気循環を理解することが可能となる。 また、本研究ではこれまでケルビン波や熱潮汐波といった惑星規模の波の金星熱圏風速場への影響を見積もってきた。ここで小規模な重力波の影響をパラメタリゼーションで新たに考慮することにより、重力波の金星熱圏風速場への影響を新たに見積もった。先行研究のシミュレーションにおいても、重力波のパラメタリゼーションを用いた研究が行われてきたが、それらのパラメタリゼーションでは単一波長の波しか扱えなかったり、熱圏固有の分子拡散による重力波の減衰過程を考慮できなかったりと、重力波に関わる物理過程を十分考慮できなかった。本研究では、Medvedev et al. [2000]の重力波パラメタリゼーションを用いることで、複数の波長の波や分子拡散過程の重力波への影響を初めて考慮した。シミュレーションの結果、重力波の運動量輸送によって高度110km以上において風速約80m/s程度の西向きの高速東西風が形成されることを示した。また、この高速東西風の影響により、O2大気光の発光領域が00:00LTから02:30LTへとシフトすることを示唆した。
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