2010 Fiscal Year Annual Research Report
汎用性高分子へのらせん構造の付与とキラル高分子材料への応用
Project/Area Number |
10J02799
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北浦 敦志 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 立体規則性 / ポリメタクリル酸メチル / らせん構造 / 光学活性 / フラーレン / 誘起円二色性 / 高次フラーレン / 光学分割 |
Research Abstract |
立体規則性が制御されたシンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(st-PMMA)は、トルエンなどの溶媒分子を取り込んで、直径が約1nmの内孔を有するらせん構造を形成し、ゲル化する。本研究では、st-PMMAがらせん構造を形成する際に、様々な光学活性化合物を添加することにより、一方向巻きのらせん構造を誘起・記憶できるかどうかについて検討を行った。 st-PMMAに種々の光学活性化合物、もしくは、それらとトルエンの混合溶液を加え、加熱・冷却の過程を経てst-PMMAゲルを調製した。ゲルから光学活性体を除去した後、フラーレン(C_<60>)のトルエン溶液を添加することでst-PMMA/C_<60>複合体を合成し、その紫外可視円二色性(ECD)スペクトルを測定し、らせん構造の片寄りを見積もった。結果、光学活性な1級および2級アミンを溶媒として用いた際に、一方向巻きに大きく片寄ったらせん構造が形成されることが分かった。一方、光学活性な3級アミンや脂肪族化合物を用いて調製したst-PMMA/C_<60>複合体は誘起円二色性(ICD)を示さなかったことから、添加する光学活性体のアミノ基上の水素原子とst-PMMAの側鎖との相互作用が、らせん構造の誘起と記憶に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、誘起・記憶されたst-PMMAのらせんの片寄りは、添加した光学活性体の鏡像体過剰率に対して正の非線形効果を示すことも見出した。 また、らせん構造が一方向巻きに片寄った光学活性なst-PMMAに、高次フラーレンを含むフラーレン混合物を添加し、st-PMMAとフレーレンの複合体を調製後、包接されたフラーレンを抽出した。得られたフラーレンのHPLC測定を行ったところ、高次フラーレンに帰属されるピークにCDが発現したことから、光学活性なst-PMMAは、高次フラーレンのキラリティーを認識し、一方のエナンチオマーと優先的に複合体を形成することが明らかになった。
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