2010 Fiscal Year Annual Research Report
酸化-乾燥ストレス交差耐性に関するイネ遺伝子資源の探索と圃場条件下での有用性評価
Project/Area Number |
10J03046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井関 洸太朗 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イネ / 酸化ストレス / 乾燥ストレス / クロロフィル蛍光 / 光阻害 |
Research Abstract |
イネの乾燥ストレス条件下における乾物生産に寄与する形質として酸化ストレス耐性に着目し,関連する遺伝子資源を探索すると同時に圃場条件下での有用性を評価することを目的とした.そこで,(1)準同質遺伝子系統群を用いた酸化ストレス耐性の簡易評価法を確立し,(2)その結果に基づき選抜したイネを圃場で栽培し,乾燥条件下での適応を調査した. (1)酸化-乾燥ストレス交差耐性に関する遺伝子資源の探索 水耕栽培した91系統のイネ幼植物体に薬剤処理による酸化ストレス処理を行ったところ,光合成電子伝達活性の指標であるFv/Fm値に大きな遺伝的変異を確認した.このFv/Fmの値は酸化傷害によって低下する細胞膜安定度の指標(MSI)と強い正の相関関係がみられた.従って,酸化ストレス耐性をFv/Fmで評価することが可能であることが示された.次に,同様のイネ材料に対して乾燥ストレス処理を与え,Fv/Fmを測定したところ,ここでも大きな遺伝的変異が確認された.注目すべきは全く別に与えた酸化ストレスと乾燥ストレスに対し,高いFv/Fmを示す遺伝子型がある程度共通していたことである.このことは酸化ストレス耐性と乾燥ストレス耐性に共通して関わる生理的特徴が存在することを示唆するものであり,乾燥ストレス耐性に関わる新たな形質として注目される. (2)圃場栽培試験 上記の評価結果に基づいて酸化ストレス耐性の異なる20系統を選抜し,東北タイ天水田における少降雨環境下で栽培した.圃場条件下で測定したFv/Fmの値は簡易評価の結果と対応がみられ,高いFv/Fmを示す遺伝子型では乾燥条件下で葉の水分状態が比較的高く維持されていた.このことから,幼苗を用いた酸化ストレス耐性の評価が圃場環境下における乾燥ストレスに対しても有効な指標となりうることが示唆された.今後は関連する生理的形質について詳しく調査する予定である.
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Research Products
(2 results)