2011 Fiscal Year Annual Research Report
転移活性をもつ内在性レトロトランスポゾンのエピジェネティックな制御機構
Project/Area Number |
10J03057
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
塚原 小百合 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | レトロトランスポゾン / セントロメア / シロイヌナズナ / エピジェネティック |
Research Abstract |
昨年度までに、Tal1レトロトランスポゾンがセントロメアリピート領域に優先的に挿入することを示唆する結果を得ていた。今年度は、全ゲノムシークエンスなどを用い、Tal1の転移および抑制についてさらに詳細に調べ、以下の結果を得た。 Tal1の転移機構について 1、Tal1導入個体において全ゲノムシークエンスを行った結果、転移したTal1の隣接配列のほとんどが、セントロメアリピート配列だった。 2、Tal1のセントロメアリピートへのターゲッティングは、Tal1をシロイヌナズナの野生型に導入した場合でも、ddm1突然変異体に導入した場合においても見られた。 Tal1の抑制機構について 1、Tal1の転写はT1からT5世代においてみられ、世代を経るにつれ抑制されるわけではなかった。 2、Tal1が転移する際に生成される染色体外DNAは、少なくともT3世代までは見られた。 以上より、Tal1がセントロメアリピートに優先的に挿入されることがより明らかとなり、その活性は、少なくとも転写レベルでは、形質転換後5世代を経た植物でも維持されていることがわかった。これまで、植物において転移可能なレトロトランスポゾンはいくつか同定されているが、遺伝子領域をターゲットするレトロトランスポゾンはあっても、ヘテロクロマチン化した領域をターゲットするレトロトランスポゾンは、植物においては見つかっていなかった。特にシロイヌナズナにおいては、セントロメア周辺にレトロトランスポゾンが多く分布しているにもかかわらず、実際にセントロメアをターゲットするレトロトランスポゾンは見つかっていなかった。今回の結果は、シロイヌナズナのゲノムの成り立ちや進化を考察する上で重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画していた実験はほぼ遂行でき、複数のアプローチにより、Tal1がセントロメア領域をターゲットしていることが示唆される結果を得ることが出来た。さらに、得られた結果は論文としてまとめ、Genes & Developmentに受理された(2012年4月1日出版)
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Strategy for Future Research Activity |
Tal1がセントロメア領域をターゲットするメカニズムについてはまだわかっていない。今後は、Tal1がセントロメア領域に優先的に挿入するめに必要な因子の同定を行いたいと考えている。
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