2010 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性金属及び絶縁体における電荷・熱輸送現象としての異常ホール効果
Project/Area Number |
10J03166
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 雄毅 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホール効果 / 磁性体 / スピンカイラリティ / マグノン |
Research Abstract |
今年度実施するはずだった研究は、新規スピン依存伝導現象の開拓として狙う、(1)スピンネルンスト効果の観測と、(2)スピノンホール効果の観測である。結果として、どちらもまだ観測できていないが、実験の過程で問題点を認識することができた。(1)に関しては、清浄な試料表面が必要であリ、また電極もうまく蒸着しないとネルンスト信号が失われてしまうことがわかった。これらを解決するにはいくつかの新しい装置が必要となり、難しい。(2)に関しては、いくつかのスピン液体候補物質で測定したが、観測はできなかった。測定を行った物質はスピン液体の"候補"物質でありそのの候補物質を含め数尽くす必要があると考えている。 一方、我々が世界に先駆けて発見した、強磁性絶縁体たおけるマグノンホール効果に関しては、大きな進展があった。我々は、異なる結晶構造をもつ様々な強磁性絶縁体を合成し、マグノンホール効果測定を行うことで、結晶構造への依存性が理論的な予測と合致することを明らかにした。これは、マグノンホール効果が真に"マグノン"由来であることを強く裏付けている。 金属系においては、らせん磁性金属におけるスピシカイラリディ誘起異常ホール効果の研究を行った。120°磁気構造をもつ擬二次元三角格子物質Fe1+xSbや、カゴメ格子物質Mn3.2Snにおいて、カイラリティ誘起異常ホール効果を観測した。さらに、典型的ならせん磁性金属であるMnPにおいて、FAN相と呼ばれる磁気相でカイラリティ起源と思われる特異なホール効果を観測した。FAN構造においてはカイラリティはOであるため、磁気構造がFAN構造ではない可能性が考えられ、H23年度に中性子回折実験等を予定している。 H23年度は、主に上記の結果を論文としてまとめる予定である。
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