2011 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性金属及び絶縁体における電荷・熱輸送現象としての異常ホール効果
Project/Area Number |
10J03166
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 雄毅 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホール効果 / 遍歴らせん磁性体 / スピンカイラリティ / トポロジカルホール効果 |
Research Abstract |
今年度は、交付申請書に記した3つの計画を実際に実行し、(1)らせん磁性金属におけるスカラースピンカイラリティ誘起ホール効果の研究において、大きな成果を上げることができた。 研究実施計画の(1)に挙げたFe_<1+x>Sbにおけるスカラースピンカイラリティによるホール効果(以下、トポロジカルホール効果と呼ぶ)は、従来トポロジカルホール効果が期待されていなかった三角格子系の120度磁気構造をもつ物質Fe_<1+x>Sbにおいて、Fe三角格子間をインターカレートするx量のFe原子のスピン偏極を利用することで、トポロジカルホール効果の発現に成功した成果である。昨年度予備実験を実施したが、今年度は再現性の確認や、数値計算による理論的説明を加え、投稿論文や国際会議等で発表した。スカラースピンカイラリティは非共面的な磁気構造に由来するもので、単純な(反)強磁性を利用しようとするこれまでスピントロニクスにおいて、将来的な応用が期待されている概念である。しかしその一方、トポロジカルホール効果を示す物質例は少なく、研究があまり進んでいなかった。このFe_<1-3>Sbにおける成果は、インターカレーションという化学においてありふれた手法を用いて、これまで発現が期待されていなかったらせん磁性体でもトポロジカルホール効果を観測することができる処方箋を与えている。これは将来的なスカラースピンカイラリティのスピントロニクスへの応用という点で重大な成果であり、交付申請書に記した研究の目的とも合致している。 (2)MnPに関するトポロジカルホール効果の研究に関しても、Mnを少量のCoに置換した物質の測定を行い、理論的に予測されていた散乱率の関数としてトポロジカルホール効果が実空間描像から運動量空間へと移り変わることを示した。結果を論文としてまとめている。
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