2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J03190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角道 亮介 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 考占学 / 古代史 / 古文字学 / 中国 / 青銅器 / 王権 / 封建制度 |
Research Abstract |
王朝による西周時代の青銅彜器の配布と、諸侯・諸氏族側によるその受容状況を検討することで当時の王朝の影響力が及んだ範囲を画定し、最終的には"中華世界"の成立過程を読み解こうとすることが本研究の大きなテーマである。上記の研究目標のもと、平成22年度は西周王朝の中心地域である西周王畿の範囲を検討することを目的に陜西省関中平原の南部・西部での青銅器の分布状況の調査を行い、同時に、諸侯国の青銅器受容状況を知るための一例として、従来あまり検討がなされていなかった台湾中央研究院所蔵の河南省濬県辛村遺跡出土の青銅器資料に対する観察を行った。結果として、関中平原南部に位置する漢中市域の出上遺物には西周王朝と関係のある遺物は少なく、当地はすでに西周王畿の範囲外に位置するものと考えられる。四川省成都周辺からも限定的に西周王朝系青銅器が出土するが、特異な器形・紋様を持ち、王朝の礼制を反映する遺物としての性格は希薄である。また、関中西部の天水地域にもやはり王朝の影響を認める二とはできない。西周時代青銅器の分布状況の変化をあわせて検討した結果、関中平原において西周前期のみの青銅彜器にしか有しない地域と、前期から後期にわたって連続的に有する地域との二つの地域が存在し、後者こそが西周王畿に相当すると指摘しうることが明らかになった。また、河南省辛村遺跡の調査に関しては、当地出土の青銅器が一般的な青銅彜器と粗製の青銅彜器とに区別できること、および典型的な西周王朝系青銅器は西周前期のものしか確認できず、当地が中期以降に西周王朝との交流が減少した地域とみなすべきであることが明らかになった。このような変化は関中の王畿外周辺地域も含めて普遍的に確認できる状況であり、西周前期から中期にかけての王朝の青銅器配布体制の性格が変化したことを物語っている。
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