2011 Fiscal Year Annual Research Report
概日時計の細胞内振動ならびに細胞間同調を担うリン酸シグナリング
Project/Area Number |
10J03287
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 康憲 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生物時計 / サーカディアンリズム / 時計タンパク質 / プロテインキナーゼ / 細胞内局在 / タンパク質リン酸化 / シグナル伝達 / モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
約1日周期の生体リズムが安定に保たれるためには、ひとつひとつの細胞が持つリズムが同調することが重要である。これまでに、細胞間のリズム同調に関わるリン酸化シグナル因子をマルチPK抗体を用いて探索したところ、細胞膜上のラフトにおいて夜(ZT16)に存在量が上昇し、非ラフト膜においては昼(ZT4)に存在量が上昇する48 kDaおよび58 kDaのSre/Thrキナーゼを見出した。これらのキナーゼは細胞間のシグナル伝達において時刻依存的な制御を担うと考えられた。そこで当該年度においては、ラフトにおいて存在量が日内変動するキナーゼを同定し、機日時計におけるラフトの重要性について追及した。まず、これらのキナーゼを同定するため、昼(ZT4)および夜(ZT16)の時刻に摘出したマウス脳からラフト画分を調製した。このラフト画分を MALDI-TOF MSにより解析したところ、48 kDaのキナーゼとしてキナーゼXを同定した。キナーゼXの細胞膜上における動態をキナーゼX特異的な抗体を用いて解析したところ、細胞膜上のラフトにおけるキナーゼXの存在量は夜(ZT16)に上昇し、非ラフト膜においては昼(ZT4)に上昇していた。ラフトと非ラフト膜におけるキナーゼXの存在量が逆位相の日周変動を示すことから、キナーゼXは一日の中でラフトと非ラフト膜の間を移行し得ると考えられる。次に、マウスの時計中枢である視床下部の視交叉上核(SCN)におけるラフトの重要性を明らかにするために、PER2::LucマウスのSCNスライスを培養して発光リズムを測定し、ラフト破壊薬である methyl-β-cyclodextrin(MβCD)の効果を調べた。その結果、マウスSCNスライスの発光リズムはMβCD処理により短周期化した。以上の結果から、細胞膜上のラフトを介したシグナル伝達機構が概日時計の周期を制御する可能性が考えられた。
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