2011 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の向社会的なやり取りと間接互恵性に関する発達心理学的研究
Project/Area Number |
10J03450
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 真由子 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 間接互恵性 / 向社会的行動 / 5-6歳児 / 行動観察 |
Research Abstract |
血縁関係のない相手と大規模な協力関係を築くのは、ヒト社会の大きな特徴である。このような協力関係を成立させるメカニズムの一つが、間接互恵性(誰かを助ければそれを見ていた別の誰かが自分を助けてくれる)である。間接互恵性に基づいた協力関係が成立するためには、第三者に対する行動から相手を識別し、第三者に援助した相手を助け、援助しなかった相手は助けないといった行動傾向が必要となる。近年、幼児を対象とした実験的な研究から、第三者に対する行動から相手を識別する能力や第三者に対する行動から相手に対する行動を変化させる能力を持つことが示された(Olson&Spelke,2008;Vaish,Carpenter,&Tomasello,2010;Kenward&Dahl,2011)。しかし、先行研究では相手がパペットや大人の実験者である状況下でのみ検証されており、同年齢の他児との実際のやり取りの中で、他児の第三者に対する行動からその相手に対する行動を変化させる行動傾向を示すのかは言及できていない。本研究では、5-6歳児同士の実際のやり取りの中で、第三者に向社会的行動を行った幼児に対して、それを周りで見ていた幼児がどのような行動傾向を示すのかを行動観察を用いて調べ、幼児同士のやり取りの中で間接互恵的な行動傾向がみられるのかを検討した。 その結果、向社会的行動が観察された直後の場面では統制場面に比べて、第三者に向社会的行動を行った幼児に対して、周りで見ていた幼児は、向社会的行動や親和的行動を行いやすかった。つまり、実際のやり取りの中でも、幼児は第三者に対する援助的な行動から相手に対する援助行動を決定するといった行動傾向を持つことが示された。この結果から、ヒトの幼児は複雑な社会関係を築き始める前の段階から、間接互恵的な行動傾向を持つ可能性が示唆され、発達段階のごく初期から間接互恵性に基づく協力関係を築く素地を持っている可能性が示唆された。
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