2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子渦とFFLO状態を通した異方的超伝導・超流動の解明
Project/Area Number |
10J03720
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鈴木 健太 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | FFLO状態 / 量子渦 / パウリ常磁性効果 / 超伝導 / 準古典Eilenberger理論 / CeCoIn5 |
Research Abstract |
重い電子系d波超伝導体であるCeCoIn5を念頭に置き、その特異な磁場中物性の解明を目指し理論研究を行った。この物質は、パウリ常磁性効果が大きく低温高磁場相にFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov (FFLO)状態が実現しているのではないかと考えられ、その物性の解明が求められている。 ◆超伝導対称性の決定に関わる低温磁場中比熱への理論的アプローチ この物質の超伝導対称性の決定に大きく関係する、磁場中比熱の振動について研究を行った。量子渦の効果や、パウリ常磁性効果を十分に考慮した研究はなかった。そこで本研究では、準古典Eilenberger理論を用い、量子渦とパウリ常磁性効果を考慮し、さらに実際の物質系を想定するうえで重要な、フェルミ速度の異方性が磁場中比熱振動に与える影響についても計算を行った。 これにより,磁場中比熱の実験からCeCoIn5の超伝導対称性を決定する為には,さらに低い温度での実験が必要であることを明らかにし、Journal of the Physical Society of Japanへ論文発表した。 ◆面内磁場を掛けた際に現れる低温高磁場相に関する新展開 CeCoIn5の面内に磁場を掛けた際に低温高磁場相に現れる新奇相は、これまで、FFLO状態と反強磁性秩序の共存相だと考えられてきた。しかし、最近行われた実験により、FFLO状態に起因する反強磁性という、単純な解釈では説明がつかないように思われた。 これに対し我々は、この状態は、パウリ常磁性効果と量子渦状態によって超伝導ギャップのノード付近で増大した状態スペクトラルによって安定化された、スピン密度波(SDW)であるという立場で研究を行った。 準古典Eilenberger理論を用い、運動量空間での状態数を計算することにより、擬2次元d波超伝導体の面内へ磁場を掛けると、ノード付近において、正常時を大きく超える準粒子スペクトルがあることを明らかにした。この準粒子スペクトルが、SDWを安定させるのではないかと議論した。垂直磁場に関しては、準粒子スペクトルの増大はなく、純粋なFFLO状態であろうと指摘した。 Physical Review Bへ論文投稿し、掲載が決定した。
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