2011 Fiscal Year Annual Research Report
月探査機かぐやの観測データと月隕石から探る月地殻の形成過程
Project/Area Number |
10J03787
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長岡 央 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 月隕石 / かぐや搭載ガンマ線分光計 / 化学組成 / 鉱物組成 |
Research Abstract |
平成23年度の研究実施状況について、平成23年度交付申請書に記載した研究実施計画に基づき報告する。 「GRSのデータ解析・考察」に関する研究報告 「かぐや」搭載ガンマ線分光計から得られた月面ガンマ線のエネルギースペクトルデータの解析を、高速計算機を用いて行った。シリコンの中性子捕獲反応並びに非弾性散乱反応から放出されるガンマ線ピークを解析し、その強度からシリコンの月面存在度地図を作成した。さらにそのシリコン分布地図と他元素の分布地図を比較検討し、月面に噴出した溶岩の場所による組成差を確認した。その分析手法やその成果については、イギリスで開かれた74th Annual Meeting of the Meteoritical Societyや、韓国で開かれた2011 Conference of International Symposium on Remote Sensingにて口頭発表を行った。 「月隕石分析・考察」に関する研究報告 ・月隕石NWA 2200については化学組成、鉱物組成をまとめ、その化学的特徴を明らかにし、形成過程について考察した。この研究成果については、論文誌に投稿し、現在返却された論文を改訂中であり、5月までに再投稿する予定である。 ・月隕石NWA2977については、取得した化学組成・鉱物組成に加えて、新しく報告された同位体情報を、「かぐや」データから導かれた月面の元素地図、地形図、年代地図と比較することで対象月隕石の起源地域を推定し、その場所で起こりうる大規模な火成活動から生じるであろう岩石の形成過程モデルを提案した。この研究成果については近日中に学術雑誌Earth and Planetary Science Lettersに投稿予定である。 ・月隕石Dhofar489の鉱物組成分析を行い、その結果を国際学会34th Symposium on Antarctic Meteoritesで口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、月隕石に関する研究成果、かぐやデータの解析による研究成果ともに、予定通りの成果を出すことができ、当初から予定していた複数の国際学会等での発表を行い、その都度研究結果をまとめることができた。 また月隕石の分析結果と遠隔探査データを統合的に理解することに努め、月地殻の構造モデルへの解釈を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題は、「月隕石の化学的情報と遠隔探査データを組み合わせた統合的理解から、新たな月地殻の進化モデルを提案する」ことである。本年度は、ある特定の月隕石の化学・鉱物・同位体情報と遠隔探査のデータを組み合わせて、月の局所的な火成活動のモデルを提案し、論文にまとめた。 今後の方針は、まず(1)現在執筆中の論文を早急に提出すること、そして(2)月隕石から得られる月地殻の化学的情報を、月を広域的に観測した遠隔探査データと組み合わせて統合的に理解すること、(3)それら統合的な理解から月地殻の形成進化過程に言及する新たな形成モデルを提案すること、である。
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