2010 Fiscal Year Annual Research Report
「からゆき」にみるジェンダー・イデオロギーの史的研究――性・移動・権力――
Project/Area Number |
10J03825
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
嶽本 新奈 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 「からゆき」 / 「密航婦」 / 渡航幇助者 / 移動 / ジェンダー |
Research Abstract |
本研究の目的は、多岐にわたる国内外の資料を用いて「からゆき」の動的な歴史的変容を、性意識の変化と合わせてみていくことで、開国以降の日本人女性たちの移動の歴史を「性」・「移動」・「権力」といったキー概念を使って明らかにしていくことである。2010年度は、地方新聞の通覧と現地調査を目的に天草、島原、長崎、福岡の順に調査に行き、主に「密航婦」に関わる記事を中心に閲覧・複写をしてきた。また年度の後半には、米国西海岸に赴き、日本人娼婦に関する記事を日系新聞から収集してきた。これまでの「からゆき」研究でほとんど検討されてこなかったのが、誘拐者とそのネットワークの分析だといえるが、資料を検討していくと「からゆき」が海外に渡航するために多くの人材が必要であることが明らかになってきた。現在は、2010年度の2回の国内外における調査旅行によって得られた資料を用いながら誘拐者のデータ分析を進めている途上だが、「誘拐者」と語られるなかに、女性や外国人の存在が見られる点に注意を向ける必要性がある。彼らな彼女らが担った役割とはなんであったのか、そこにジェンダー的要素はあったのか、検討すべき課題は多い。2010年度の成果の一部は、「『からゆき』渡航幇助者の出身地、職業、ジェンダーによる一考察」(『ジェンダー史学』7号)としてまとめたが、引き続き資料を精査し裏付けをしていきながら、「誘拐者」と漠然と語られる言葉の内実とそのジェンダー的役割、そうしてそれらを包括するネットワークを明らかにしていきたい。また、そうした事実を理論的に整理するための研究論文の精読に務めていきたいと考えている。
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