2011 Fiscal Year Annual Research Report
集積の動学的外部性と地域経済の成長に関する実証分析
Project/Area Number |
10J03832
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 恵里 名古屋大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地域経済 / 産業集積 / 名古屋大都市圏 / 成長クラスター / 技術的近接性 / 探索的空間データ分析 |
Research Abstract |
本研究は,一国経済よりも小規模かつ開放的な地域経済を対象とし,多様な成長パターンがどのような要因によって決定付けられているのかを定量的に分析することを目的とする。従来の研究より,地域における産業集積構造の相違が長期的な地域経済の生産性向上や成長に及ぼす影響が強くなっていることや,産業集積は産業特化や多様性の程度により同業種・異業種間の連携を通じて行政境界を超えた地域で分布することが示されている。本研究では,それぞれの産業集積が構成する特徴的な空間のつながりを考慮しながら産業集積と地域経済の持続的な成長との関連性を検証する。 本年度の研究は,昨年度の研究をベースに分析対象を製造業以外の産業へ拡張し,異業種間の連携をも観察可能にした。本研究では産業集積が構成する空間について,地域間の地理的近接性と産業間の技術的近接性という性質の異なる二つの空間から構築し,地域産業の成長クラスターの分布を把握することを試みた。1986~2006年の名古屋大都市圏に分類される市区町村レベルでのデータを利用し,探索的空間データ分析(Exploratory Spatial Data Analysis:ESDA)を応用して地域産業の成長クラスターを検出した。 推定結果より,成長クラスターは分析対象地域の東部(愛知県三河)地域を中心に分布することが明らかとなり,同地域からは地理的近接性において異なる閾値(40分または120分)を設けると重層的な構造を持つ成長クラスターが検出された。つまり,サービス業と製造業との相互依存関係が有効に働く多様性を持つ少数地域から構成される小さな(40分圏)クラスターを,主に輸送用機械製造業への特化が高い複数地域から構成される大きな(120分圏)クラスターが取り囲むように異なる意味を持つクラスターが同時に存在していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
名古屋大都市圏における市区町村別産業従者数という詳細なデータを用いて,産業集積の空間的つながりを考慮した分析により,成長に有効に働く産業集積の地理的範囲や産業間連携について具体的な分析結果が得られた。地域間の地理的近接性に加えて産業間の技術的近接性を考慮した空間を構築することは従来研究にはない新規のアイディアであるが,産業政策などに対する考察は乏しい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は分析結果から具体的な施策評価を行うことを目指す。ESDAで構築した空間(ウェイト行列)を空間計量経済(Spatial Econometrics)モデルに適応し,産業集積と地域経済成長に関係のある要因,特に持続的な成長に有益とされる動学的外部性について経済理論と整合性を図りながら統計的な検証を試みる。
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