2010 Fiscal Year Annual Research Report
白金錯体を触媒とする水からの水素生成反応の速度論的研究
Project/Area Number |
10J03838
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 幸正 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水の可視光分解 / 白金(II)錯体 / 水素発生 / 均一系触媒 / 光エネルギー変換 / ビオローゲン / 安定性 / 速度論的研究 |
Research Abstract |
近年、太陽光をエネルギー源とした水の可視光分解反応(2H_2O+hv→2H_2+O_2)に大変注目が集まっている。水の可視光分解に関する研究に関連して、EDTA/Ru(bpy)_3^<2+>/MV^<2+>(メチルビオローゲン)/白金(II)錯体からなる均一系光触媒系において、光化学的な水からの水素生成反応が進行することが報告されている。最近、白金(II)錯体の活性を疑問視する報告が複数なされたが、研究代表者らはその暗反応を追跡することによりその触媒作用を実証することに成功している。本課題では、白金(II)錯体の水素生成触媒反応機構について速度論的研究を行うことを目的としているが、今回、その前段階として水素ガス下における白金(II)錯体触媒の耐久性評価を行った。白金(II)錯体は、触媒的に生成した水素ガスにより分解反応を引き起こす可能性があり、このような研究は非常に重要である。まず0.1MNaClを含む0.1M酢酸緩衝溶液(pH5)に白金(II>錯体を溶解することで白金(II)錯体水溶液を調整した。次に、白金(II)錯体水溶液を真空凍結脱気し、気相を1気圧の水素ガスで満たした。以後の反応は吸光度の経時変化で追跡した。その結果、比較的高い活性を有することが報告されているcis-PtCl_2(NH_3)_2およびPtCl_2(ethylenedialmine)については、ベースラインの緩やかな増大が観測された。それぞれの溶液を濾過し濾液の吸光度を測定したところ、それぞれの錯体に固有の吸収帯の減少が観測された。一方、多座配位子を持ち剛直なPtCl_2(4,4'-dicarboxy-2,2'-bipyridine)および[PtCl(2,2';6',2"-terpyridine)]+は5時間の実験中、安定に存在した。また興味深いことに、非常に高い活性を有することが報告されているcis-PtCl_2(4-carboxypyridine)_2も、同様に分解しないことが分かった。多座配位子を持たない本錯体が安定であった理由として、π受容性配位子が安定性に大きく寄与したということが考えられる。しかしながら、cis-PtCl_2(4-carboxypyridine)_2は水素分子に対する安定性を有するものの、光安定性に乏しいことも判明した。
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