2010 Fiscal Year Annual Research Report
岩石のダメージと非線形粘弾性の効果を考慮した断層ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
10J03866
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川田 祐介 東京大学, 地震研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 粘弾性 / 複雑系 / 相互作用 / 緩和時間の分布関数 / 微分幾何学 / 分数階微積分 / クリープ |
Research Abstract |
1、巨視的な粘弾性挙動と微視的な構造との関係を明らかにするシミュレーション 岩石や多くの複合材料について,その粘弾性挙動を歪速度と応力との間をべき乗関係で表現する構成則が多く用いられる.これらは通常,高温クリープに関する転位理論や実験結果など,平均場モデルとして導出されており,例えばクラック密度が高い場合などに重要な,微視的構造間の相互作用を考慮していなかった.本研究では,これまで平均場モデルとして導出されていた粘弾性構成則について,内部要素間の相互作用も含めた集団的ダイナミクスとしての粘弾性挙動として見直し,緩和時間の分布関数も考慮した構成則に拡張した. 2.分数次微積分を用いた粘弾性挙動の記述 岩石の流動則(非弾性挙動の構成則)は,構成則の適用が目的であったために,その現象論的構成式の数理的・熱力学的な背景についてはほとんど探求されてこなかった,そこで,微分幾何学の範疇で応力・応力速度・ひずみ(計量)・ひずみ速度(捩率)のパラメータからエネルギー関数を定義し,分数階微分を用いた一般化粘弾性構成則を導出した.この分数階微分は,その階数が自然数から正の実数に拡張されており,時間遅れの効果を含んでいる.この一般化で,マクスウェル・ケルビン・フォークト・ツェナーモデルなどのあらゆる粘弾性モデルを包含できており,フック弾性とニュートン粘性の中間の挙動を表現できる.この構成式を用いて,岩石(岩塩・方解石・レルゾライト)の高温変形実験のデータから,微分の分数階を決定する解析を行った.これらの岩石は,緩和弾性率(時間に依存して変化する応力と歪の比)が時間のべき乗則に従い,そのべき乗則の指数から微分の分数階が得られる.解析結果の基づく考察から,この微分の階数は,巨視的な時間遅れと拡散や転位クリープなどの微視的な変形機構とをつなぐ変数であることを明らかにした.
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