2011 Fiscal Year Annual Research Report
岩石のダメージと非線形粘弾性の効果を考慮した断層ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
10J03866
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川田 祐介 東京大学, 地震研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非線形粘弾性 / 遷移挙動 / 分数階微積分 / レオロジー / 動的すべり / 地震 / クリープ / べき乗則 |
Research Abstract |
1.斜方輝石の遷移挙動に関する非線形粘弾性構成則の導出 岩石・鉱物は,流動変形する条件下において応力・歪がかかると変形をはじめ,それに合わせた構造に変化したのち,安定して変形を続ける.ここで,安定した変形に至るまでを遷移挙動,安定した変形を定常挙動と分類する.流動変形を説明するために用いられている経験的・理論的構成則は定常挙動のみを説明し,遷移挙動は説明できない.しかし,地震後の余効変動や後氷期変動など,遷移挙動が本質的な場合も多く,遷移挙動も表現できる構成則の導出は重要である.本研究では,斜方輝石の遷移から定常領域にわたる挙動を上で導出された構成則で解析を行い,緩和弾性率(時間に依存する応力と歪の比)と時間の関係を調べたところ,逆べき乗則の関係がみられ、遷移挙動も定常挙動も同構成則で説明できることを確かめた.また,緩和弾性率とは別に歪に非線形な関数も得られ,この関数によって遷移領域にのみ特徴的な加工硬化の時間発展も定量的に説明できた. 2.分数次微積分を用いた粘弾性挙動の記述 地震時には断層面上で動的なすべりが起きる.この状況を一次元に簡略化して数値解析を行った.動的すべりによって断層面では空隙が増加する.したがって,空隙率の時間発展は,滑りに関するパラメータ(すべり量や速度)に依存すると考えられる.ここで,変位・速度はそれぞれ変位の0階・1階微分である.この間の0から1までの非整数階微分も含めて,空隙率発展の変位~速度依存性を検討し,それらに対応する応力-すべり量関係を導出した.すると,変位の0階から0.75階微分に依存するときは最初滑り弱化が起こるものの,途中から滑り強化されて自発的に停止する傾向がみられた一方,1階微分に近づくにつれて解が分岐し,すべり強化されてすぐに滑りが停止する場合と,弱化して滑り続ける場合に分かれるという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分数階微積分という地球科学では新しい概念を取り入れることで,粘弾性挙動や断層すべりの挙動についてこれまでにない新知見も得られ,順調に進展したといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様に着々と研究を進める.特に分数階微積分という概念の導入は当初の計画にはなかったものだが,意外な興味深い結果を得ている.最終年度ということもあるので,これまで以上に論文・学会発表での公表を行いたい.
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Research Products
(3 results)