2010 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュにおける貧困とサイクロン被害の因果関係に関する研究
Project/Area Number |
10J03875
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日下部 尚徳 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バングラデシュ / サイクロン / 貧困 / 防災 / 災害 |
Research Abstract |
バングラデシュは洪水・干ばつ・サイクロンといった自然現象が、災害と呼ばれる規模で人びとを襲う災害リスクの高い国である。サイクロンだけをみても1970年に50万人、1991年には14万人の人びとがサイクロンによって命を奪われている。これらは20世紀以降に世界を襲ったサイクロンによる人的被害(台風・ハリケーンを含む)の上位2位を占めている。最近では、2007年11月15日午後18時半頃に南部沿岸部に上陸した観測史上最大級のサイクロン「シドル(SIDR)」によって、死者・行方不明者計4000人以上、被災者約900万人という大きな被害が発生した。本研究の目的はバングラデシュにおけるサイクロン被害と貧困の因果関係を明らかにし、今後の防災政策にむけた論点を抽出することにある。 1、インタビューによる質的研究 サイクロン「シドル」被災地10箇所を訪問し、被災者計100人に対してベンガル語による半構造的インタビュー調査を実施した。この調査から被災当日の住民の行動をグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析したところ、サイクロンの襲来の事実を知りながらも、事前に避難行動に移ることのできない住民の存在が明らかになった。 2、質問票をもちいた量的研究 ノアカリ県ハティア島におけるサイクロン高度危険地域200世帯に対し、質問票を用いた家計調査、移住に関する調査、避難に対する意識調査を実施した。この調査結果を分析したところ、(1)家財の盗難(2)家畜の被害、(3)警報への不信、が住民の避難意思阻害要因として明らかとなった。また、堤外地の高度危険地域に最貧困層が土地を求めて移住する現象が特徴的にみられた。サイクロン高度危険地域である南部沿岸地域は、土壌侵食が激しいことから、移り住んだ土地がさらに浸食で失われるケースもあり、住民は複数回にわたって移住を繰り返している。住民はサイクロンと土壌侵食という二重の自然災害によって、生活がさらに困窮すると考えられる。
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Research Products
(11 results)