2010 Fiscal Year Annual Research Report
メタ個体群理論を応用した環境保全型水田地帯における広域的害虫防除法の検討
Project/Area Number |
10J03899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 明良 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分断化 / 広域的害虫防除 / アカスジカスミカメ / イタリアンライグラス / 斑点米力メムシ / 環境保全型稲作 / 外来植物 |
Research Abstract |
宮城県大崎市田尻の農地ランドスケープで2009年度に行われた、外来牧草イタリアンライグラス(ネズミムギ)の牧草地の分断化(牧草地の刈り取りによる面積縮小)実験によって得られたデータを解析したところ、分断化処理を行った実験区内の刈り残し牧草地において、牧草地を発生源とするイネ害虫アカスジカスミカメの密度が有意に抑制されたことが確認された。 また、2010年度は同地域において初夏に好天が続いたため、農家による牧草地の刈り取りが前年度より進み、その結果、刈り残された牧草地は極めて分断化された状態となった。刈り残された牧草地においてアカスジカスミカメの密度を調査したところ、調査地内の密度の平均値は前年度の平均値を有意に下回っていた。また、調査地内の環境保全型農地におけるアカスジカスミカメによるイネの被害も前年度を下回る傾向が示された。これらの結果は2009年度の分断化実験の結果を支持するものであったが、好天に伴う高温がアカスジカスミカメの宿主である牧草の夏枯れを促進し、その結果密度が低下した可能性も否定できない。ただし、分断化の影響(牧草地間の移動コストの増加等)と宿主の質の低下は背反する要因ではなく、むしろ、宿主の質の低下が牧草地からの移出を促すことで正に相関しているかもしれない。 以上の結果では、分断化の効果を定性的にしか評価していなかったが、今後は、2009年に得られたデータから分断化がアカスジカスミカメのメタ個体群に与える効果を定量化し、2010年度以降(※)のデータを適切に予測できるかを検討することで、分断化が害虫防除に十分応用可能な現象であるかを検証する予定である。 ※必要があれば2011年度にもサンプリングを行い、データを追加する。
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