2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代における生人形の在り処-博物館と百貨店の展示装置をめぐって-
Project/Area Number |
10J03981
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹原 明理 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生人形 / 見世物 / マネキン / 百貨店 / 展示 / 菊人形 / 人形芸術 / 帝展 |
Research Abstract |
本年度実施した調査内容は、当初の研究実施計画からの変更点が多くあった。まず、百貨店での資料収集は、電話調査および現地調査を実施したものの、生人形に関する資料はほぼ現存しないことが判明した。また、国内外の博物館との接触が上手くいかず、調査を断念せざるを得なかったため、来年度早期に再度実施したいと考える。だが、その一方で、2月に実施した東京・谷中の面六への聞き取り調査では、当時の写真帖に生人形の百貨店での展示の様子が記録されているほか、マネキンコンテストが実施されていたことも判明し、今後の研究遂行にとって重要な資料を発見することが出来た。 また、近代以降の生人形を考察する上で、「菊人形」が重要なキーワードとなった点も、当初の計画を変更した一つの理由である。菊人形の頭・手足制作は、生人形師が現在に至るまで活動を継続することが出来た重要な仕事の一つである。11月に実施した南陽・二本松・笠間での菊人形展見学により、新たに愛知県在住の人形師からも聞き取り調査を行うことが出来、また、枚方市で菊人形の保存活動をする市民ボランティアへの参加・聞き取りによって、現在、生人形制作技術が新たな形で継承されつつあることもわかり、新たな論文執筆のテーマとして、来年度から本格的にアウトプットする予定である。 そして、研究成果発表は,8月の国際日本学研究会、10月に開催された日本民俗学会年会、その他研究会にて口頭発表を行った。内容は、前年度から継続していた生人形と昭和初期の「人形芸術運動」について、雑誌『人形人』を参考に取り上げ、近代以後、人形が「美術」のジャンルとして確立する中、生人形がどのように扱われていたのかについて、新たな観点から検討した。このテーマについては、現在論文執筆中であり、平成23年度内に2本の論文を刊行する予定である。
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Research Products
(2 results)