2010 Fiscal Year Annual Research Report
「環境権」をめぐる公共性概念に関する研究 ―松下竜一の「暗闇の思想」を中心に
Project/Area Number |
10J04034
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀川 弘美 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 松下竜一 / 草の根市民運動 / 運動 |
Research Abstract |
松下竜一の運動思想を中心に研究活動を行っている。特に本年度は、松下が生前に辿った運動の軌跡を私自身が辿り直すことにより、いかなる形で松下の思想が引き継がれ、紡がれているのかを言語化する作業を行った。松下の運動の特徴の一つは女性の運動の可能性に着目した点である。松下が書き言葉を残した女性たちによる運動、特に日本国内の反原発運動、イギリスのグリーナムコモンでの反核ミサイル運動へのフィールドワークを行った。また、もう一つの松下の運動思想を特徴づけるものとして、刑罰概念の問い直しという作業がある。獄中者とつながることに尽力し、また現在の法律において「罪」と定義されている行いをした人たちの生を、作家として辿ることで書き言葉において彼/彼女らの生を確保するという作業を営んだ。松下がこの営みに注ぎ込んだエネルギーの大きさから、松下の刑罰に関する運動に焦点を当てることとした。刑罰の中でも死者をめぐる書き言葉に松下自身大きな葛藤を強いられている。松下の苦悩、懊悩を一つの手がかりとして研究を進めてきた。松下の怒り、憤怒と、松下が生涯に亘り言及し続けた「優しさ」とが非常に近くにあることを論じ、70年代から松下が展開した草の根市民運動の意義を、運動の政治的解決という側面とは異なる、運動における関係生成という側面から論じた。政治的解決という結論から見ると敗北と言われる運動に、もう一つの土俵があり、その土俵において運動は継続し、紡がれていることを証明することは、運動という固定化されたイメージを解きほぐす契機となると考えている。
|