2011 Fiscal Year Annual Research Report
Hisタグ/Ni(II)-NTAペアによる細胞発現タンパク質のラベル化技術の開発
Project/Area Number |
10J04346
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内之宮 祥平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Hisタグ / Ni-NTA / 細胞内ラベル / ファルネシル化EGFP / ラベル化タンパク質の拡張 / ラベル化プローブの拡張 / プロテアソーム分解 / タンパク質半減期測定 |
Research Abstract |
本研究では、オリゴヒスチジン(Hisタグ)とnitrilotriacetic acid (NTA)のNi(II)錯体との相互作用を利用し、共有結合により機能性分子をラベル化可能な「Hisリアクティブタグ」の開発を行っている。これまで、本手法を用いて、細胞内に発現させたファルネシル化EGFPのラベル化に成功してきた。そこで今年度は、ラベル化法の拡張に取り組んだ。Hisタグ導入タンパク質として、細胞膜の内側に局在させたファルネシル化EGFPだけではなく、細胞質全体に局在しているFKBPI2-EYFPのラベル化にも成功した。さらに、同様に細胞質全体に局在しているFRBのラベル化にも成功し、本手法が様々なタンパク質をラベル化出来ることが分かった。また、ラベル化出来る機能性分子として、ビオチンのラベル化に成功した。また、蛍光色素であるフルオレセインに加え、ヒュースゲン環化反応のリアクティブハンドルであるアジドのラベル化もウエスタンブロッティングによって確認した。本手法は、細胞内で様々なタンパク質をラベル化出来るのみでは無く、様々な機能性分子をラベル化出来ることが分かり、細胞内でタンパク質をラベル化出来る一般性の高い手法であることが分かった。 このような一般性の高いラベル化法の報告例はなく、非常に有用な手法である。 一方、細胞内ラベル化の経時変化をウエスタンブロッティングで追跡すると、興味深いことにラベル化体のバンドがある時点を境に減少することが分かった。細胞にプロテアソームの阻害剤であるMG132を添加したところ、ラベル化体のバンドの減少が見られなかった。すなわち、ラベル化体のプロテアソーム分解を追跡できていることが分かり、本手法がラベル化タンパク質の半減期を測定できる新規手法となりうることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでHisリアクティブタグによる細胞内タンパク質のラベル化に成功してきたが、ラベル化出来るタンパク質および、ラベル化可能なプローブは一種類に限られていた。本年度の研究によってラベル化法の拡張に成功し、本手法が一般性が高い手法であることが確立できた。さらに、ウエスタンブロッティングによりラベル化の経時変化を測定すると、ある時間を境にラベル化タンパク質のバンドが減少するという興味深い現象が見られた。様々な実験を行うことで、このバンド減少がプロテアソームによる分解であることを突き止めた。本手法が生細胞内で直接タンパク質の半減期を測定しうる手法となることが示され、研究として大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
本手法での課題は、本手法をイメージングに適応できないことである。これは、細胞内に導入したプローブを洗浄によって除去できないため、未反応のプローブがバックグラウンドとして検出されるためである。そこで、ラベル化と当時に蛍光がオンとなる、蛍光オフ・オンシステムの開発によってこれを解決する。具体的には、プローブに消光基を導入し、ラベル化と同時に消光基が脱離するシステムの開発を目指す。細胞内のタンパク質を蛍光ラベルし、その局在および細胞内挙動を蛍光イメージングできる手法の開発は有意義である。特に、任意のタイミングで蛍光ラベルできる手法の開発はパルス・チェイス解析等を可能とする。このようなラベル化は機能性分子でラベル化することでしか達成できず、既存の蛍光タンパク質を用いた手法では難しい。そのため、本ラベル化法を蛍光イメージングへと拡張する研究は意義深いと考えられる。
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