2010 Fiscal Year Annual Research Report
トラウマ被害者に生じる外傷後ストレス反応の維持要因の解明と介入プログラムの開発
Project/Area Number |
10J04387
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 大輔 早稲田大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トラウマ / 外傷後ストレス症状 / 症状に対する認知 / 生活支障度 |
Research Abstract |
外傷体験(トラウマ)は,外傷後ストレス症状やうつ症状の増悪のリスクファクターであり,心身の健康に重大な影響を与えることが明らかにされている。そして,近年,提唱されたEhlers & Clark (2000)の外傷後ストレス障害(PTSD)の認知モデルによると,「トラウマ」やその結果生じる「外傷後ストレス症状」を過度にネガティブに認知(解釈)してしまう個人は,外傷後ストレス症状が維持されやすいことが指摘されている。しかしながら,2つの認知要因のうち,「外傷後ストレス症状」に対するネガティブな認知が外傷後ストレス症状の維持に及ぼす影響は実証的には明らかにされていない。 そこで,本研究では,一般大学生の中で外傷体験者を対象として,外傷後ストレス症状に対する過度にネガティブな認知を測定できる尺度(NAP ; Negative Appraisal for PTSR)を開発するとともに,この認知が外傷後ストレス症状の維持に影響を及ぼしているかどうか検討を行った。 その結果,NAPは,信頼性と妥当性をある程度有する尺度であることが示された。さらに,NAPは外傷後ストレス症状を統制した後も,症状の苦痛度や生活支障度,精神的健康と有意な正の相関がみられた。このことから,症状の重症度のみならず,症状に対する否定的な解釈を行うことによって,症状の苦痛度が増し,生活支障度が阻害される可能性が示唆された。つまり,外傷後ストレス症状に対するネガティブな認知は,PTSDやトラウマ性障害に対する臨床実践の際にも有用な治療ターゲットであることが示唆された。
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Research Products
(5 results)