2011 Fiscal Year Annual Research Report
トラウマ被害者に生じる外傷後ストレス反応の維持要因の解明と介入プログラムの開発
Project/Area Number |
10J04387
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 大輔 早稲田大学, 人間科学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | トラウマ / 外傷後ストレス障害 / 臨床群 / 症状に対する認知 |
Research Abstract |
外傷体験(トラウマ)は,外傷後ストレス症状やうつ症状の増悪のリスクファクターであり,心身の健康に重大な影響を与えることが明らかにされている。そして,近年,提唱されたEhlers&Clark(2000)の外傷後ストレス障害(PTSD)の認知モデルによると,「トラウマ」やその結果生じる「外傷後ストレス症状」を過度にネガティブに認知(解釈)してしまう個人は,外傷後ストレス症状が維持されやすいことが指摘されている。しかしながら,2つの認知要因のうち,「外傷後ストレス症状」に対するネガティブな認知が外傷後ストレス症状の維持に及ぼす影響は実証的には明らかにされていない。 そこで,昨年度は,大学生の中で外傷体験者を対象として,外傷後ストレス症状に対する過度にネガティブな認知を測定できる尺度(NAP ; Negative Appraisal for PTSR)を開発し,その信頼性と妥当性を確認した。そして,今年度は特に臨床群(PTSD患者)を対象に,外傷後ストレス症状に対するネガティブな認知と外傷後ストレス症状の関連の検討を行った。その結果,外傷後ストレス症状に対するネガティブな認知は外傷後ストレス症状と関連することが明らかにされた。このことから,つまり,外傷後ストレス症状に対するネガティブな認知は,PTSDに対する臨床実践の際にも有用な治療ターゲットであることが示唆された。また,PTSD治療で標準化されている心理教育の治療コンポーネントに,「症状のノーマライゼーション」を積極的に組み込むことが有用であることが裏付けられたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度,計画されていた研究対象者に対して,面接および質問紙調査が実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように,本年度,計画されていた研究対象者に対して,面接および質問紙調査が実施できた。ただし,今回得られた知見を一般化するためには,データ数を増やす必要がある。
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Research Products
(5 results)