2011 Fiscal Year Annual Research Report
トランシルヴァニアにおけるジプシーの音楽経験の多様性についての人類学的研究
Project/Area Number |
10J04450
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
林 美鈴 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ルーマニア / ジプシー / 音楽経験 / ポスト社会主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ルーマニア、トランシルヴァニア地方におけるジプシーミュージシャンの活動を軸に、彼らの音楽経験のあり方を、以下の3点に注目し考察することである。1、ポスト社会主義のルーマニアという、政治、経済、文化的な変化の中での人々にとってのジプシー音楽の作用 2、ラウターリのライヴ活動、マスメディアを通しての販売戦略をめぐる、非ジプシーであるルーマニア人や外国人との関係 3、ジプシーコミュニティ内の歌やダンス、彼ら独自の言語(ロマニ語) 上記について、現地での参与観察と人々への聞き取り調査、公文書館での歴史資料の検討によって明らかにしていく。 それに関する平成23年度の研究実績は以下の3点になる。 (1)平成22年度までに取り組んだ短期フィールド調査と文献による研究成果を論文としてまとめ、学術雑誌に投稿した。これについては現在査読中である。 (2)ルーマニアに赴き、6か月にわたる長期フィールド調査を実施した。現地のジプシーミュージシャンの活動に同行し、音楽制作の過程のみならず、生計戦略や、顧客との関係性、日常生活における問題や課題などについて参与観察を行った。一方で、ミュージシャン以外のジプシーの人々の活動について、NPO団体の人々と接触し、調査を行った。更に、現地の研究者らによる研究会に参加し、専門家との意見交換やインタビューを行った。 (3)イギリス、ミルトンキーンズ市、オープン大学にて行われた国際シンポジウム「Citizenship After Orientalism」に参加した。「オリエンタリズム」と「国民性」の問題はヨーロッパ内におけるジプシーの問題を考察する上でも重要なテーマである。他地域の研究者との意見交換を行ったと同時に、イギリス在住のジプシー研究者を訪問し今後の研究に関するアドバイスをいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度、論文執筆を行ったが、平成23年度中に発行される雑誌ではなかったため、結果として本年度の研究業績とはならなかった。また、大半の時間を長期フィールド調査に費やしたため、学会発表を行うことができなかった。これらに関しては平成24年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23年度に行った長期海外フィールド調査で得られた成果を基に、6月に行われる日本文化人類学会を始め、各研究会で発表を行う予定である。そこで得られた知見やアドバイスを基に、論文や研究ノートの執筆を行い、「日本文化人類学会」や「東欧史研究会」などの各学術論文雑誌への投稿を予定している。
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