2010 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界降着流・噴出流の輻射輸送および輻射磁気流体シミュレーション
Project/Area Number |
10J04587
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川島 朋尚 千葉大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ブラックホール / 降盤円盤 / 輻射輸送 / 輻射流体 |
Research Abstract |
ブラックホールは自ら光を放出しない天体であるブラックホールの質量やスピンを推定するためには、ブラックホール周りに形成される回転プラズマ(降着円盤)からの輻射を観測し、詳細な理論モデルと比較する事が必要不可欠である。しかし超臨界降着流と呼ばれるエディントン光度(球対称降着の場合の限界光度であり中心天体の質量に比例)を超える非常に明るい降着円盤の詳細な理論スペクトルは明らかになっていない。そこでブラックホール超臨界降着流の2次元輻射流体シミュレーションすることで得られた物理量を用いてモンテカルロ法に基づく輻射スペクトル計算を実施した。その結果ブラックホール近傍でのバルク・コンプトン散乱および熱的コンプトン散乱により輻射スペクトルが従来の1次元超臨界降着流のそれと比べ有意に硬くなる事がわかった。さらに本研究で得られた輻射スペクトルは超高光度X線源(近年、系外銀河で多数発見されている10倍太陽質量ブラックホールのエディントン光度を超える明るいX線点源)のスペクトルの特徴的な幕指数やカットオフおよび光度を良く再現している。超高光度X線源の中心ブラックホールの質量は太陽質量の10倍程度である(すなわち超臨界降着)という解釈と100倍以上である(亜臨界降着)という2通りの解釈があり、この問題を解決する事は宇宙物理学の最重要課題の一つである。本研究では10倍太陽質量のブラックホールを仮定しており、超高光度X線源の中心ブラックホール質量は銀河系内のブラックホール候補天体と同様に10倍太陽質量程度であるとする説を支持する。この研究成果を各種国際会議や国内学会で発表した。またこの研究を中心とした成果を博士学位論文にまとめ学位を取得した。本研究成果は学術誌Astrophysical Journal Letterに投稿する予定である。
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