2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J04593
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
工藤 瞳 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペルー / 働く子ども / 児童労働 / 教育政策 |
Research Abstract |
本研究ではペルーにおける児童労働擁護の運動がどのような思想のもとに生まれ、政策と関わり、変化・持続してきたかを明らかにすることを目的としている。その中で平成23年度は特にペルーの働く子どもの運動の日常的な活動と、運動から派生した学校教育活動の実態を、2011年7月から12月にかけての5カ月間の現地調査により明らかにした。またその前段階として、論文「ペルーにおける子どもの働く権利を求める運動:その教育活動とラテンアメリカの思想・実践との関連」を『比較教育学研究』に発表するとともに、2011年6月の日本比較教育学会大会において「ペルーにおける働く子どもの運動による教育機会の保障」として個人発表を行った。上記論文において、ペルーの働く子どもの運動が解放の神学や民衆教育、都市下層民を中心とした社会運動等の、社会的に抑圧された人々自身による彼らをエンパワーメントする思想や実践活動に影響を受けていることを指摘し、同運動が先行研究において「児童労働に擁護的である」という極端な立場を取るものであると認識されることが多いのに対し、具体的な活動においては子どもが働くことを肯定的に捉えた上で、家庭の状況など仕事以外で子どもが直面する困難を理解しながら、学校教育活動も行っていることを述べた。本論文では一見異端視される運動がどのような背景をもち、困難に直面する子どもと彼らにかかわる大人が具体的にどのような実践を行っているのかに焦点を当てた点に意義がある。上記の研究に加えて、現地調査においては働く子どもをはじめ、どのような子どもが公立学校に排除されるのかという点に着目し、公立学校における入学基準の調査等を行った。また、ペルーにおいて政策的言及の多い教育の地方分権化の動向について「ペルーにおける教育の地方分権化の過程と課題」を『京都大学大学院教育学研究科紀要』に執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ペルーにおける児童労働擁護の運動の思想的背景および運動から派生した教育活動との関連について、学会誌『比較教育学研究』に発表することができた。また、約5カ月間の現地調査において、運動をより詳細に観察するとともに、働く子どもを対象とするものを含めた多様な学校教育の状況について多くの知見を得ることができたため、(1)当初の計画以上に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
児童労働や働く青少年に関する先行研究では、彼らの生活に焦点を当てたものが多く、彼らへの教育の欠如や留年・中退・学業成績不振といった問題もしばしば指摘される。本研究では今後これらの問題に関して、教育制度・政策の観点から考察を行う。具体的には、初等教育で約20%、中等教育で約40%が留年・中退している(2010年)ことから、学校が子どもを排除する要因、また子どもが就学を継続しない要因に関して、先行研究のレビューおよび現地調査を行い、これらを明らかにする。
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Research Products
(4 results)