2010 Fiscal Year Annual Research Report
女性の出産と就業に影響を与える新たな要因を発見するための実証研究
Project/Area Number |
10J04630
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
湯川 志保 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 子どもの所得(女性) / 親への経済援助 / 親の世話 / 女性の就業 / 子どもの誕生 / 労働時間 / 賃金 |
Research Abstract |
本年度は女性の所得が親への経済援助と世話(介護)行動に与える影響について、(公)家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」を用いて分析した。親に対する経済的援助と世話についての意思決定は、家計によって同時に決定されると考えられるが、この同時性を考慮した上で所得が親への経済援助と世話に与える影響を分析した研究はあまり存在しない。分析の結果、65歳未満の親を持つ女性では、所得が高い女性ほど親への経済援助を行う意思があることが確認されたが、所得は親への世話に関する意思には有意な影響を与えないことが示された。以上の研究成果は、日本労務学会第40回全国大会で発表され、学会での議論を参考として、次年度では、親への援助と女性の就業に関する分析を行う予定である。 また、現在進行中の研究として、子どもの誕生が親の労働時間や賃金に与える影響についての分析を行っている。この研究でも、前述の(公)家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」を用いており、個人固有の効果をコントロールした上で、子どもの誕生の効果を推定している。推定の結果、子どもの誕生は父親の労働時間と賃金をともに上昇させるという結果が得られた。また、子どもの誕生が賃金に与える効果は近年減少しており、逆に労働時間を増加させる効果が強くなっていることが確認された。出産による父親の労働供給行動の変化は、母親の行動にも影響を及ぼすと考えられるため、この研究結果は近年の少子化問題を考える上でも重要であると考えられる。子どもの誕生が母親の賃金や労働時間に与える効果の詳細な推定については、現在進行中であり、次年度以降の研究課題の一つである。これらの研究は完成次第学会において報告を行うとともに、論文として結果をまとめる予定である。
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