2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J04709
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
似鳥 雄一 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 紀伊国鞆淵庄 / 惣庄・惣村 / 検注帳・検地帳 / 高野山 / 庄司氏・林氏 / 身分 / 神仏免 / 新田開発 |
Research Abstract |
本研究は、中世後期村落の動向と性格、地域社会全体における位置付けを明らかにすることを目的としている。 本年度は紀伊国鞆淵庄を題材として、庄内のほぼ全域をカバーする正長元年(一四二八)、天正一九年(一五九一)の二点の土地台帳に関する定量的な分析を中心として、耕地所有における地区別・身分階層別などの相対的な構造変化と、そこからみえてくる「惣庄」の実態と変容について検討を行った。 その結果、以下のような成果を得ることができた。(1)地区別でみると中央部から周縁部へと生産力のシフトか起こっていた。その中でも特にシェアを伸ばしているのは、室町・戦国期から台頭して近世には当地でトップの地位を獲得する庄司氏・林氏の根拠地となる地区であり、彼らの存在がその背景にあったと考えられる。(2)身分階層別でみると、庄内のトップに関しては番頭から庄司氏・林氏へという画期的な勢力交替が起こっていたものの、それ以外の構成員についてはフラットな身分構造を持っており、身分秩序の動揺もみられず安定的な庄内運営が行われたと考えられる。「フラットな身分構造」とは闘争の時代に形作られた惣庄の理念であり、鞆淵庄ではそれが中世の終わりまで生きていたと結論付けた。(3)上記のような地域的な構造変化を生んだ要因を探ったところ、庄司氏・林氏の勢力基盤は正長の時点ですでに用意されており、特に庄司氏は神仏免の集積や新田開発によって信仰・開発における主導権の掌握へ向かっていたことがわかった。(以上、執筆中)
|