2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀ドイツにおける音楽教育方法論についての研究―ミューズ教育に着目して―
Project/Area Number |
10J04854
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 英恵 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プリッツ・イェーデ |
Research Abstract |
ミューズ教育の思想を実践に移したと言われるプリッツ・イェーデ(Fritz Jode、1887-1970)の音楽教育論に焦点を当てて研究した。 (1)イェーデの音楽教育理念の研究:内面的育成と音楽教育とを結びつけた点に彼の教育理念の特徴を見出し、この点に焦点をあてて検討した。その結果、内面的育成の内実である「生」や「愛における共同体」というキーワードの示すものが、イェーデにとって、音楽における内面性、創造性、有機性、崇高な精神と同義のものであったことが彼が内面的育成を実現するために他ならぬ音楽教育を主張した理由であったことを明らかにした。この成果は『京都大学大学院教育学研究科紀要』第57号への掲載予定である。 (2)イェーデの音楽基礎教育についての研究:イェーデの音楽観「オルガニク」を基盤としてこの基礎教育を検討することで、その特徴を新たに指摘した。この基礎教育の特徴は、先行研究において指摘されている音楽活動の中での基礎教授という点だけでなく,それに伴い、(1)音楽の文法に基づく音の動きの感覚を内面において感じることを基礎教育の内容とすること,(2)その動きは音楽の種類によって異なるために,どの音楽を理解させるのかという明確な意図をもって,基礎教育の内容を編成していることにもあった。この成果は日本音楽教育学会第41回大会で発表した。又『音楽教育学研究』に投稿し現在査読中である。 (3)イェーデによる音楽における「創造」のための教育の研究:この教育の方法論において反主知主義や生徒指向の授業と専門的な能力の要求や教師主導の授業という対立的2側面がいかに共在するのかを明らかにした。その結果この2側面は、音楽における個別に自由な内面的側面と専門的共通言語を用いる表現法の側面という2つにそれぞれ対応した方法論を取るかたちで共在していた。この成果は、日本教育方法学会第46回大会で発表した。又『教育方法学研究』第36号への掲載予定である。
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