2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀ドイツにおける音楽教育方法論についての研究―ミューズ教育に着目して―
Project/Area Number |
10J04854
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 英恵 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フリッツ・イェーデ / 音楽教育 / 青少年音楽運動 / 青少年音楽学校 / アドルノ |
Research Abstract |
本年度は、20世紀のドイツにおいて活躍したフリッツ・イェーデ(Fritz Jode、1887-1970)の音楽教育論について以下の研究を進めた。 (1)青少年音楽運動におけるF.イェーデの音楽教育論-Th.W.アドルノによる批判の検討をとおして- イェーデ率いる青少年音楽運動に対して、アドルノは痛烈な批判を行った。そのためイェーデの音楽教育論の正当な評価は立ち遅れたといわれる。そこで、多様な潮流を含むこの運動に対するアドルノの批判をイェーデの主張に焦点化させた場合、それは妥当なものであったのかという点について検討した。その結果、アドルノによる青少年音楽運動批判とイェーデの音楽教育論との照らし合わせから見えてくるものは、アドルノの批判の妥当性よりもむしろ、批判の根底にある両者間における音楽教育観や音楽観の相違であった。したがって、イェーデの音楽教育論はアドルノによる批判によって低く価値づけられるものではなく、アドルノと異なる音楽教育の立場を示すものと結論づけられた。この成果は、日本音楽教育学会第42回大会で発表し、『京都大学大学院教育学研究科紀要』(第58号)に掲載予定である。 (2)フリッツ・イェーデの青少年音楽学校構想-シャルロッテンブルク青少年音楽学校におけるカリキュラムの検討- イェーデの構想により1923年に創設されたシャルロッテンブルク青少年音楽学校は、学校種と教育の質において実験的な学校であった。検討の結果、この学校のカリキュラムは、専門的知見に基づいた種々の内容が、有機的、総合的な方法において、常に人間間のつながりを重視した「生彩に富む音楽活動」のなかで系統的に教授される音楽授業と、学校内外の日常生活のあらゆる場面において、自主的かつ共同の音楽活動を行う授業外の活動からなっていた。この成果は、日本カリキュラム学会第22回大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、20世紀ドイツの音楽教育方法論について特に音楽活動において内面的なものを重視するミューズ教育に着目してその理論及びその理論を実践へと結び付けるための具体的な教育方法を明らかにし、わが国の学校音楽教育への示唆を得ることにある。本研究ではこれまでに、ミューズ教育の理念を音楽の授業において初めて実現した人物であるフリッツ・イェーデの音楽教育に焦点をあて、その理論と具体的な方法を明らかにしている。 また、イェーデへの批判をふまえての多角的な検討も行っている。以上からおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究計画においては、当初ミューズ教育のアプローチにはじめて輪郭が与えられた20世紀初頭と、その新たな展開を見せた1970年代の2つの時代に焦点をあてて研究を進める予定であった。しかしながらこれまでの研究遂行過程において、20世紀初頭の理論として注訂したフリッツ・イェーデの音楽教育論の内実は多岐にわたっており、さらにその研究を深めるべき課題があることが明らかになった。したがって、今後もイェーデの論に絞って焦点を定め、彼の論についてさらに以下の点について明らかにする予定である。 (1)イェーデの理論や実践の根底に流れる子ども観、教師観について (2)イェーデが自らの音楽教育論を実践する教師を育成するために提唱した教師教育カリキュラムについて さらに、これらの成果およびこれまでの成果をふまえて、イェーデの音楽教育論がいかなるものであったのかという全体像を明らかにするとともに、それが現代のわが国の音楽科にどのような示唆をもたらすのかを明らかにすることが今後の方策である。
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