2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規の反応論の導出を指向した水溶液中での基礎有機反応シミュレーション
Project/Area Number |
10J04901
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 真 立教大学, 理学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 反応機構 / フラグメント分子軌道法 / 分子動力学法 / 求核的溶媒関与 / 加水分解反応 / 接触イオン対 |
Research Abstract |
本年度においては、t-BuClの加水分解反応シミュレーションを主に取り扱った。まずフラグメント分子軌道法(FMO)を電子状態計算に用い、水分子410個の液滴モデル中におけるt-BuClに対してHF/6-31G^*レベルによる分子動力学(MD)シミュレーションを行った。反応座標(RC)を3級炭素-塩素間距離として定義し、ブルームーン法による自由エネルギー変化の計算を行った結果、RC=2.80Åに遷移状態、2.84Åに接触イオン対に対応する点がそれぞれ現れた。また反応原系(RC=1.86Å)を基準とした自由エネルギー変化は、それぞれ14.6kcal/mol、14.5kcal/molであった。さらにRC=2.8Å(遷移状態)のトラジェクトリーから得られた同径分布関数より、求核的溶媒関与と考えられるピークを見出し、t-BuClの背面から水分子がメチル基の水素と相互作用していることが分かった。以上の結果は、第21回基礎有機化学討論会(2010年9月)にて報告済みである。次に計算レベルをMP2/6-31G^*として同様のシミュレーションを行ったところ、水分子の不自然な解離が起こり、MDが破綻してしまった。これはFMOの2体近似(FMO2)の由来のアーティファクトであると考えられたため、HF部分のみに3体近似を用いるFMO(3)-MP2レベルでの計算を実行した。しかしこの方法では、1ステップにかかる時間がFMO2-MP2の場合と比べて約10倍程度増加するため、現在も計算が進行中である。
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Research Products
(1 results)