2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J04910
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧山 健 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 運動学習 / 神経細胞の冗長性 / 冗長なニューラルネットワークモデル / ベイズ統計 / スイッチング状態空間モデル / 状態遷移 |
Research Abstract |
自転車やバットなどの道具を上手に使いこなせるようになるなど,我々は高度な運動を学習により獲得することができる.運動に携わる主な脳の領野である一次運動野には,少なくとも1億個以上のニューロンが存在する.一方,脳から送り出された運動指令を受ける筋肉は高々400個しか存在しない.つまり,我々が普段行っている運動にはニューロンの冗長性の問題が内在している.そして,400個の筋肉に対し1億個以上ものニューロンが存在している理由は未だ明らかでない.本研究では運動野モデルの理論解析を行い,ニューロンの冗長性は運動学習の学習速度を最大化していることを定量的に示した.つまり,ニューロンが大多数存在することは,高度な運動を素早く学習するために必要な神経基盤であることを明らかにした.一方,ニューロンの冗長性が1つの原因となり,同じ試行を繰り返し行っても記録されるニューロン活動は試行毎に異なる.多くの先行研究ではニューロン活動の試行平均を行い脳機能の解明を進めてきた.しかしながら,近年ニューロン活動の試行毎のばらつきから運動開始の反応時間が推定できることが示され,試行平均ではなく1試行毎にニューロン活動データを解析する重要性が示唆されてきている.本研究は少ないデータから統計量を推定できるベイズ統計の枠組みを用い,試行毎にニューロン活動データを解析する統計手法を提案した.物体の運動方向をサルに答えさせる課題時のニューロン活動データへ本手法を適用した結果,単一ニューロンの活動データのみから,冗長なニューラルネットワークが表現している運動方向の明確さを推定できることを示した.以上から,本年度はニューロンの冗長性が運動学習において果たす機能的役割の解明,そして冗長性が存在するために必要な統計解析手法の提案を行った.
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