2010 Fiscal Year Annual Research Report
心不全増悪予防のための効果的な管理プログラムの開発と有効性検証に関する研究
Project/Area Number |
10J04943
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 尚子 東京大学, 医学部・附属病院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 慢性心不全 / 疾病管理 / Quality of Life / セルフケア / 自己管理 / 患者教育 |
Research Abstract |
本邦の慢性心不全患者は増加傾向にあり,再入院率が高い.心不全増悪の誘因には,不整脈心筋虚血などの医学的因子だけでなく,塩分の過剰摂取やセルフモニタリンダの不足,心不全増悪時の不十分な対処行動など,患者のセルフケア不足によるものが多い.欧米では,セルフケア強化に焦点を当てた心不全疾病管理プログラムの心不全入院抑制効果が示されている.一方,わが国の心不全疾病管理に関する報告は極めて少なく,効果的な心不全管理プログラムの構築が急務である. 近年,心不全のセルフケアの中でも特に受診の遅れが問題となっている.そこで,心不全患者のセルフモニタリングと症状増悪時の受診行動を明らかにすることを目的とした多施設共同研究を実施した.毎日体重を測定している患者は半数を超えたが,体重増加時に医療者に連絡する患者は3割弱であった.さらに,これらの行動が不十分であることには,心不全入院歴がないことや左室駆出率が保たれた心不全であることが統計的有意に関連しており,心不全に関する知識が少ないことには関連の傾向が見られた.本結果については,国内外の学術集会で発表予定である. 疾病管理プログラムの効果指標の1つであるQuality of Life(QOL)についても検討した.ミネソタ心不全質問紙を用いた本研究では,慢性腎臓病と抑うつ症状が心不全患者のQOL低下に密接に関与していた.さらに,このような自記式質問紙で測定したQOLスコアは,心イベントの独立した予測因子であることが示された.QOLに関する研究結果は,循環器専門誌に投稿し受理された. われわれはこれまで心不全セルフケア支援プログラムを開発しその効果を検証してきた.今年度は,プログラムの予備調査結果をまとめ国内の学術集会で発表するとともに,ランダム化比較試験の結果とあわせて学術雑誌への投稿準備を進めた.
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