Research Abstract |
心不全疾病管理プログラムの開発に関する研究では,慢性心不全治療ガイドラインに基づく教育パンフレットを開発し,その結果を学術雑誌に投稿し,受理された.これまでわが国で体系的に作成された心不全患者教育資料は無かったことから,本研究で開発されたパンラレシトは,わが国の心不全患者教育支援の質の向上に資することが期待される.今後はこのパンフレットを用いたプログラムの効果を検証予定である. 心不全と抑うつに関する研究では,近年注目を集めている左室収縮能の保たれた心不全に着目して検討した.本研究によれば,抑うつ症状の有病率は,左室収縮能の保たれた心不全で25%,左室収縮能の低下した心不全で24%と有意差はなく,いずれの群でも抑うつは予後を悪化させる独立した危険因子であった.本研究により心不全における抑うつは左室収縮能に関わらず予後を規定する因子であることが示され,心不全の抑うつに対する治療・ケア提供の重要性が確認された.本結果は,学術雑誌に投稿し,受理された.また,国内外の学術集会で発表した. 心不全患者の予後規定因子を包括的に評価する研究では,心不全入院患者の退院時と退院数カ月後の臨床属性,心理社会的属性,治療・ケア等のデータを収集中である.今後は,これらのデータと生命予後との関連性を評価する予定である.本結果の一部は,平成24年度の学術集会で発表予定である.本邦の心不全患者の心理・社会的背景や提供されたケア内容に関する報告は少なく,本研究により得られる知見は,わが国の質の高い心不全ケアのあり方を検討するうえで貴重な資料になることが期待される.
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