Research Abstract |
慢性心不全増悪予防のための疾病管理プログラムの開発に関する研究では,その効果指標のひとつとして,心不全の知識を評価する尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検証した.本結果は欧州の学術集会で発表し,学術雑誌に受理された.教育支援を主体としたプログラムの効果を評価するためには,心不全入院や死亡などの臨床転帰のみならず,提供された教育支援の直接効果を明らかにすることも重要である.本研究で開発した心不全知識尺度は効果的な疾病管理プログラムを検討するうえで貴重な資料を提供しうると考えられる.また,開発した疾病管理プログラムの有効性を検証した結果は,平成25年度の学術集会で発表予定であり,論文化に向けて準備を進めている.さらに,共同研究者として携わった心不全患者のセルフケアに関する国際比較研究の結果は,学術雑誌で受理された. 心不全患者の予後規定因子を包括的に探索する研究では,服薬アドピアランスと心事故との関連性を追跡研究により検討した.その結果,服薬アドピアランスが低いことは,収縮不全患者の心事故リスクを高める独立した危険因子であることが分かった.エビデンスの確立された薬物治療の効果を最大限に引き出せるか否かは,患者の服薬アドピアランスにかかっており,本結果はその支援の重要性を示唆するものである.本研究の一部は国内外の学術集会で発表した.さらに本年度は,収縮不全に対するβ遮断薬の効果についても検討し,β遮断薬の用量と心拍数が予後に及ぼす影響を明らかにした.本結果は,国内の学術集会で発表し,学術雑誌に受理された. これらの研究から得られた知見は,わが国の慢性心不全に対する包括的疾病管理プログラムの在り方を検討する際に有用な示唆をあたえうると考えられる.
|