2011 Fiscal Year Annual Research Report
他者の行為表象による自己の課題遂行への影響に関する研究
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10J04948
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
西村 聡生 上智大学, 総合人間科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 実験心理学 / 認知心理学 / 行為と認知 / 自己と他者 / 刺激反応適合性 / 共同表象 |
Research Abstract |
以下の4つの研究を行い、他者の行為に関する表象が自己の課題遂行に及ぼす影響、および行為に関連する特性が課題遂行に影響するメカニズム全般についての研究成果を得た。1.課題とは無関係な他者の指差し行為を示す画像の呈示が、自己の両手を用いた左右反応行為に及ぼす影響について検討した。他者の行為の意図に関連した指差し方向での行為の促進がみられた。指差し画像の手の左右と反応に用いる手の左右の対応に基づく模倣的効果は、指差し画像呈示直後にはみられなかったが時間が経過すると生起した。他者の行為を知覚すると、自己の課題遂行に対して、その抽出された意図による影響と行為そのものの模倣的影響が同時に、自動的に異なるタイムコースで独立して生じることを明らかにした。2.隣接する他者と分担して課題を遂行する場合の認知表象特性について検討した。画面の左右どちらかに呈示される刺激に基づき自分の側の反応を行うかどうか選択する課題においては、隣接する他者の課題にかかわらず、他者がもう片方の反応を担当していれば、刺激が自分の側に呈示された方が相手の側に呈示された場合よりも反応がはやかった。他者と隣接して課題を遂行する場合、他者の課題ではなく行為そのものが表象され自己の課題遂行に影響することが示唆された。3.知覚と行為の相互作用において、刺激をどのように反応に割り当てるかという行為表象が刺激の位置に関する知覚表象を規定し、その知覚表象が課題遂行に影響することを明らかにした。これにより行為表象が課題遂行に影響するメカニズムの一端を明らかにした。4.自身が他者(の行為)をいかに表象するかは、自身の構えにも大きく影響されることが示唆されている。知覚および認知処理をトップダウン的に変調する神経メカニズムについて、機能的MRIを用いて検討するための研究を開始し、データを収集している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
他者の行為表象による自己の課題遂行への影響に関して、行為を示唆する刺激を知覚した場合や実際に他者と隣接して課題を行う際の認知特性、また行為表象が課題遂行に影響を及ぼすメカニズムを、複数の実験を通じて明らかにし、幅広い成果を得た。さらに、知覚・認知処理のトップダウン的変調の脳機能に関する実験も順調に進んでいる。以上のように、当初の計画を上回る進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき、引き続き他者の行為表象による自己の課題遂行への影響を総合的に明らかにするための研究を実施していく。研究に関するデータも多く得られてきているので、今後は論文の執筆と投稿にもいっそう注力していく。また、海外研究機関での研究を予定している。
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Research Products
(6 results)