2010 Fiscal Year Annual Research Report
公害・環境概念の歴史的生成をめぐる論理と力学の解明
Project/Area Number |
10J04967
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
友澤 悠季 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 公害 / 住民運動 / 社会運動 / 市民運動 / 社会学 / 科学技術社会論 / 環境問題 / 高度経済成長期 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「公害」および「環境」概念の歴史的な生成と展開のプロセスに働いた論理と力学を解明することである。これまで戦後日本の環境問題史において、「公害」から「環境」へという概念の転換は、「被害者」対「加害者」の対立構図をのりこえ、より複雑多様な問題を議論できる地平を開いた点が評価されるいっぽうで、政治経済的意図による反公害住民運動への直接・間接的な弾圧や誹謗中傷行為が行われ、問題が矮小化された点が批判されてきた。しかしこれらの議論には、切実な異議申し立ての必要を抱えた当事者ら自身が、抗議行動や環境権裁判などを通じて、「公害」「環境」概念をどのように解釈し変容させていったのかという視点からの検証が十分ではなかった。1970年代初頭には全国に約3000の運動体があったとされる反公害住民運動は、その大部分が埋もれたままになっているのである。 本研究では、この欠落を埋めるための方法として、宇井純公害問題資料コレクション(埼玉大学共生社会教育研究センター所蔵)内・1970年代反公害住民運動資料に基づく現地調査を行い、住民運動における「公害」「環境」概念を地域社会の個別具体的現実に即した形で解明する作業を進めてきた。今年度は、岩手県・宮城県・沖縄県において運動当事者らへの聞き取り調査と資料収集を行った。その結果、(1)運動体の発行する紙媒体では、現地当事者の声と、宇井純や東大自主講座、他地域の住民運動との交流が頻繁に行われる中で、「公害」「環境」概念を含む運動思想が自由に混じりあっていた、(2)運動体の声明における「公害(反対)」「環境(保全)」などの文言は、必ずしも当事者個々人における実際の反対理由を直接示すものではない、という示唆が得られた。これら複層的な文脈の中で「公害」「環境」概念に込められていった固有な意味合いを捉えることが次年度の課題である。
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Research Products
(2 results)