2010 Fiscal Year Annual Research Report
両親媒性有機分子を触媒的に用いる効率的水中有機反応の開発
Project/Area Number |
10J04974
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 圭佑 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 長鎖アルキル基 / 両親楳性 / 立体効果 / 柔軟性 / 水 / 反応場 / 配位子 / 有機分子触媒 |
Research Abstract |
(1)触媒量の両親楳性イミダゾリウム塩による水中での反応場の構築(Heterocycles, 2010, 80, 989-1002.)イオン液体等を媒体とする反応での、生成物の単離の困難さや高コストであることなどの問題点をふまえて、長鎖アルキル基置換両親楳性イミダゾリウム塩の水中での自己組織化を利用した触媒量のイミダゾリウム塩による反応場構築を試みた。この結果、両親楳性イミダゾリウム塩を用いるとわずか1mol%の添加でも求核置換反応が水中で円滑に進行する効率的な反応場となることを見出した。α位に不斉炭素を持つα-プロモエステルの反応で、N上にビナフチル基などの不斉置換基を導入したイミダゾリウム塩を用いて速度論的分割も試みたが、エナンチオ選択性は見られず本反応の不斉反応への展開はできていない。 (2)長鎖アルキル基が置換した配位子を用いた銅触媒による末端アルキン変換反応の開発 長鎖アルキル基置換イミダゾール誘導体が金属触媒の配位子としても有効であることを明らかにした。これまでに銅触媒を用いた2つの末端アルキン変換反応(CuAAC反応;Org. Lett. 2010, 12, 4988-4991.Mannich反応;Synlett, 2010, 3053-3056.)に有効であることを報告した。ここで配位子に置換する長鎖アルキル基は立体効果を示しながらも柔軟な性質を持つという特徴により、触媒活性を高めるとともに、広い基質一般性にも寄与していると考えている。また、本触媒系が水中でも活性を保ち有効であることも、基質適用範囲の拡張および反応の効率化に貢献している。これらの研究では、これまで注目されてこなかった長鎖アルキル基の特性を活かした配位子設計を行っており、独創的で新たな概念を提供したものとなっている。 (3)二官能性有機分子触媒を利用した複素環化合物の新規不斉合成法の開発 分子内に末端基として求核性ヘテロ原子を持つα,β-不飽和カルボニル化合物を原料または中間体とし、第3級アミンとチオウレアを同一分子内に持つ二官能性有機分子触媒を作用させると、分子内ヘテロマイケル付加反応がエナンチオ選択的に進行し、複素環化合物の新規不斉合成法となることを見出した。
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