2012 Fiscal Year Annual Research Report
電離圏駆動MHD不安定性がもたらす新たな磁気圏ダイナミクス理論の構築
Project/Area Number |
10J05197
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
平木 康隆 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | アルヴェン波 / オーロラ爆発 / 磁気圏・電離圏結合 / MHDシミュレーション / 非線型発展 / フィードバック不安定 |
Research Abstract |
本研究では、磁気圏・電離圏結合系におけるオーロラアークの成長を、系に固有の磁気流体力学的不安定性の非線型発展の観点から探求する。電離圏上の密度および沿磁力線電流構造として出現するアークの成長と、その非線型発展としての渦構造生成を統一的に説明することが本研究の目的である。そのための理論モデルとして、磁場閉じ込め核融合プラズマの解析に用いる簡略化磁気流体方程式を磁気圏プラズマの記述に適用するとともに、中性大気との摩擦効果を含む二流体方程式を高度積分して電離圏プラズマのモデルを設定する。こうして磁気圏・電離圏結合系モデルを構成し、3次元シミュレーションを行った。 今年度の研究成果の概要を述べる。双極子磁場配位におけるアルヴェン速度の非一様性を考慮して、アルヴェン波固有モードの線型解析を行った。1-10Hz周波数帯の電離圏キャビティモードの不安定特性を詳細に押さえると共に、電離圏・磁気圏両キャビティに捕捉された"ハイブリッドアルヴェン共鳴"が励起されることを発見した。この成果をPhysics of Plasmasに発表した。 次に、空間分解能を上げるため系を2次元に落とし、2場方程式を用いた非線型シミュレーションを行った。最大成長率をもったアルヴェン波固有モードを初期揺らぎとして成長させ、非一様媒質中での波の成長と非線型結合の性質を調べた。モデルを4場方程式に拡張し、アルヴェン波との結合によるスローモード成長の様子を捉えた。この成果を11th International Conference on Substorms等にて報告した。さらに、同様の設定で3次元シミュレーションを行い、アルヴェン波の非線型成長とそれに伴う渦構造の形成、初期アーク構造との相互作用について調べた。電離圏側で現れる微細構造が磁気圏側に瞬時に伝わり渦が成長する様子が捉えられた。この成果を地球電磁気・地球惑星圏学会秋期大会にて報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長時間存在するオーロラアークの磁気シア効果を考慮し、アルヴェン波の線型固有モードの安定性解析を行った。実際の系に適用し、シアにより低波数モードが安定化すること、アルヴェン高調波の遷移、などの特徴を明らかにした。この結果をもとにして、「非一様媒質中でのアルヴェン波の非線型発展」を調査するための、精密シミュレーションコード開発を行った。研究計画・成果ともに順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り「磁気圏-電離圏結合系におけるアルヴェン波の非線型シミュレーション」を実施し、オーロラの構造形成・ダイナミクスの理解を図る。特に、研究目的とした"オーロラ爆発現象"の発生メカニズムを解明する。具体的には、その初期にみられる"アーク構造から渦列構造への遷移過程"を再現する。一方で、磁気圏と電離圏の結合過程に関する数理構造を体系化するべく、計算結果に対して理論解析を行う。高精度シミュレーション、理論解析を実施し、それらの研究成果を国際雑誌に論文として発表する。
|