2012 Fiscal Year Annual Research Report
変質と物質移動を連成したコンクリートの化学的侵食モデルの構築と劣化予測手法の提案
Project/Area Number |
10J05262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 慎太郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 熱力学的相平衡 / 物質移動 / 多相系 / 劣化予測 / 酸劣化 / コンクリート |
Research Abstract |
今年度は,物質移動と化学反応を連成した劣化予測手法の構築および構築した劣化予測手法を用いた酸劣化メカニズムに関する検討を行った.初めに,劣化予測手法の構築について,物質移動については拡散方程式を,化学反応については,多相系における複数の化学反応を同時に解く1つの手法として熱力学的相平衡を用いた.本劣化予測手法を用いて実験結果の再現を試みたところ,実効拡散係数の校正は必要となるが,硫酸がコンクリートに作用したときのセメント水和物の変質挙動および劣化の進行速度に関する予測については精度良く再現できることを示した.また,本劣化予測手法を用いてコンクリートの酸劣化に及ぼす硫酸濃度や酸性溶液種類の影響について検討したところ,本手法にて,これらの影響を評価できることを示すことができた.この結果を踏まえると,これまでに構築されてきたコンクリートの硫酸劣化に対する劣化予測手法ではコンクリートの硫酸劣化に関する濃度依存性に対応できないため,適用範囲が限定的であるのに対し,本劣化予測手法であればコンクリートに作用する硫酸濃度に依存せずに劣化予測を行うことができることを示した. また,今年度は実構造物の劣化予測に関する検討も上記検討と合わせて実施した.対象とした構造物は18年間供用された酸の作用を受ける橋脚である。この構造物に対して本研究で構築した劣化予測手法を用いた劣化状況の再現を試みたところ,塩化物イオンの挙動についての再現性は高くないが,その他のセメント水和物の変質挙動については非常に精度良く再現できることを示す結果となった.ただし,本劣化予測手法は流水による磨耗の影響についての考慮が不足しているため,対象構造物が受ける物理作用についてはt則などの経験的な劣化予測手法を併用する必要がある.
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