2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J05706
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大貫 俊夫 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 修道制 / 修道院 / シトー会 / 西洋中世史 / 西洋法制史 / ロタリンギア / 記憶 / フォークタイ |
Research Abstract |
第一年度目に取り組むべき内容として、申請書の年次計画にテーマ1《修道院とロタリンギア社会の相互関係》と記した。これはロタリンギア、特にメス司教区のシトー会修道院の社会への経済的・社会的・宗教的貢献からロタリンギア社会そのものを総合的に把握するもので、特に修道院保護の観点から、従来分断されがちであった法制史研究と社会史研究を接合することを試みるものである。 こうした研究の枠組みの中で、本年度は論文・口頭発表で一貫してシトー会修道院とロタリンギア社会の相互関係を、「保護」という現象を通して論じた。従来論じられてきた修道院と上級保護者保護者(大抵は領邦君主)の関係に加え、個々の所領に慣習法として残存しているフォークタイの問題に着目した。12世紀末以降相続権に基づくフォークタイの主張によって紛争が度重なったのは、まさにシトー修道制のムーブメントが後退し、白い修道士の従来までの「霊的サービス」が社会の要望水準に見合わなくなったたことを物語る。つまり、寄進者の相続人がフォークタイに基づいて修道院を圧迫する時、シトー会修道院は外部社会との関係の仕方を改める必蔓に迫られたと結論付けた。そこで修道士は、様々な「霊的サービス」で社会に対する要請に応えたと理解できよう。 また、2010年5月から8月、2011年1月にドイツ・トリーア大学でA.ハーファーカンプ教授の下で研究に従事し、その間、コブレンツ州立中央文書館、トリーア市立図書館、フランス国立図書館、モゼル県立文書館で史料収集を行なった。前二者ではトリーア大司教区のシトー会修道院に関わる手稿史料、後二者ではメス司教区のシトー会修道院に関わる手稿史料を収集し、その後読解・分析を進めた。研究実施計画の遂行にあたり、ほとんど手の付けられていない史料を入手できたことの意義は大きい。これらは次年度以降の研究公表に寄与するであろう。
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