2011 Fiscal Year Annual Research Report
海洋島における適応放散的種分化の機構を保全する―集団内遺伝構造仮説の検討―
Project/Area Number |
10J05727
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
須貝 杏子 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 小笠原諸島 / 海洋島 / 遺伝構造 / 適応放散 / 種分化 |
Research Abstract |
小笠原諸島に分布するハイノキ属3種(チチジマクロキ・ウチダシクロキ・ムニンクロキ)全667個体について7遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて集団遺伝学的な解析を行った.その結果,島内に分布する3種の識別ははっきりとできるものの,もっとも個体数の多いチチジマクロキにおいても種内に明瞭な遺伝構造はみられなかった.先行研究で明瞭な遺伝構造が明らかになっていた分類群と異なり,ハイノキ属は非常に狭い地域にのみ局所的に分布していることが影響しているのではないかと考えられた. これまでの研究は,形態変異が大きく島内で複数種に適応放散している属を中心に進められてきた.そこで,島内で形態的には比較的均一なシマホルトノキを対象に,種内の遺伝的多様性や遺伝構造のパターンを明らかにした.シマホルトノキは,小笠原の固有木本種でホルトノキ属に分類される常緑高木である.父島列島から母島列島にかけて分布し,乾性低木林から湿性高木林までの幅広い環境に生育する.比較としては,内地に分布するホルトノキ,火山列島に分布するチギを用いた.次世代シークエンサーによりEST-SSRマーカーを開発し,これら3分類群,計21集団685個体について,EST・SSRマーカー24遺伝子座を用いて集団遺伝学的解析を行った.その結果,シマホルトノキは,父島列島の集団は2つの遺伝的なグループ,母島の集団は1つの遺伝的なグループに遺伝的にまとまることが示唆された.父島列島の2つの遺伝的なグループは,地理的なまとまりとは対応しておらず,それぞれのグループは比較的乾燥した地域と湿った地域に分かれて分布していると考えられた.形態レベルの違いを認識できない場合でも,小笠原の固有木本種において遺伝構造が明瞭に形成されている事例が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小笠原諸島におけるサンプリングや解析は順調に進んでいるからである.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は小笠原諸島のデータと比較を行なうため,日本本土の近縁種の解析を進める予定である.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Development of EST-SSR markers for Elaeocarpus photiniifolia (Elaeocarpaceae), an endemic taxon of the Bonin Islands2012
Author(s)
Sugai, K., Setsuko, S., Uchiyama, K., Murakami, N., Kato, H., Yoshimaru, H.
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Journal Title
American Journal of Botany
Volume: 99(2)
Pages: e84-e87
DOI
Peer Reviewed
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