2012 Fiscal Year Annual Research Report
海洋島における適応放散的種分化の機構を保全する―集団内遺伝構造仮説の検討―
Project/Area Number |
10J05727
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
須貝 杏子 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 小笠原諸島 / 海洋島 / 遺伝構造 / 適応放散 / 種分化 |
Research Abstract |
海洋島で一般的にみられる進化現象の1つとして,異なる生育環境への適応を伴う生態的種分化が挙げられる.生態的種分化は,地理的障壁による隔離がない状況下で,異なる生育環境間での分断化選択と同系交配を促進する交配前隔離によって引き起こされると考えられている.小笠原諸島は東京から約1,000km南に位置する海洋島であり,個々の島の面積は比較的小さいが,複雑な地形に対応して様々な植生がモザイク状に配置し,複数の生物群において生態的種分化が報告されている. 小笠原諸島に固有なシマホルトノキは,湿性高木林から乾性低木林まで幅広い環境に生育しているが,これまでに環境ごとの形態的差異などは報告されていなかった.本研究では父島列島のシマホルトノキ11集団337個体を用いて,24遺伝子座のEST-SSRマーカーによる集団遺伝学的解析を行った.さらに,父島の4集団において,開花期調査と土壌水分量,植生高の測定を行った. その結果,父島列島内における生育環境間(湿性高木林と乾性低木林の間)の集団間の遺伝的分化(0.005≦F_<ST>≦0.071)は,同一生育環境内の集団間の遺伝的分化(0.001≦F_<ST>≦0.070)より大きいことが分かった.さらに,遺伝的に分化したグループ間では,開花期にずれがあり,土壌水分量と植生高にも差がみられた.これらのことから,父島列島では,シマホルトノキの遺伝的に分化した2つのグループが側所的に分布しており,それらのグループ間では開花期のずれにより遺伝子流動が制限されていることが明らかになった.シマホルトノキは,種分化の初期段階にあると考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から進行していた近縁種を含めたシマホルトノキの遺伝的多様性・遺伝構造の解析に関しては、論文を投稿し、現在改訂中の段階まで進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度が最終年度だった。
|
Research Products
(3 results)