2011 Fiscal Year Annual Research Report
循環型電子伝達系の増強による、C4植物の二酸化炭素の漏れの軽減と光合成効率の改善
Project/Area Number |
10J05770
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田副 雄士 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | C_4植物 / 循環型電子伝達系 / Flaveria bidentis / PGR5 |
Research Abstract |
本研究は、C_4植物のキク科のフラベリア(Flaveria bidentis)を用いて、光化学系Iの循環型電子伝達系に関わる遺伝子の高発現により、C_4植物の光合成効率を高めることを目的としている。平成22年度に作出したPGR5の過剰発現フラベリアを用いて、平成23年度は解析を行った。得られた形質転換体について、抗PGR5抗体を用いてウェスタンブロットを行ったところ、クロロフィルあたりのPGR5量は、野生株の1.6~2.0倍増加していた。 クロロフィル蛍光解析を行ったところ、50 μmol photons m^<-2>s^<-1>の弱光下では、非光化学消光(non-photochemicalquenching:NPQ)がPGR5過剰発現フラベリアにおいて高くなった。また、光化学系II(PSII)とI(PSI)の量子収率から循環型電子伝達速度を計算すると、PGR5過剰発現フラベリアにおいて野生株よりも高くなった。以上の結果から、PGR5の過剰発現により、特に弱光下において循環型電子伝達の増強が期待される。今後は、得られたPGR5過剰発現体を用いて、弱光下におけるCO_2の漏れ、C_4光合成効率について、CO_2同化速度の測定より評価する。 得られた形質転換体のT_1世代を用いて、500-800μmol photons m^<-2>s^<-1>、日周期16h/8h (Day/Night)の強光条件下で栽培したところ、野生株では強光ストレスにより葉の色が退色していたのに対し、形質転換体では緑色が濃く、面積当たりのクロロフィル量も野生株より多かった。このことは、PGR5の過剰発現が強光ストレスの軽減に寄与している可能性を示唆している。植物の光合成において、PGR5がどのような役割を担っているのかについて、現在も不明な点が多く、循環型電子伝達以外にも影響を及ぼしている可能性がある。C_4光合成におけるPGR5の役割について明らかにするために、PGR5過剰発現体を用いて、弱光、乾燥、低CO_2など様々なストレス条件下において栽培し、解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までで、循環型電子伝達系を増強させた形質転換フラベリアの作出に成功しており、本研究の最も大きな課題はクリアしたと言える。得られた形質転換体において、ウェスタンブロットの解析より、PGR5量が2倍以上増加したことが確認された。また、クロロフィル蛍光の解析により、PGR5の過剰発現が、循環型電子伝達系の増強に寄与している結果が得られており、ここまで計画通り、順調に研究が進展していると評価している。今後は、解析する形質転換体のラインを増やし、CO_2の漏れや光合成効率を、CO_2同化速度の測定により評価するのみである。これに関しては、予備実験は既に出来ているので、24年度で十分なデータを出して、論文投稿が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたPGR5過剰発現体を用いて、今後はCO_2同化速度の測定を行う予定であるが、PGR5過剰発現体において弱光下のCO_2の漏れが軽減し、光合成効率が改善していれば、本研究の目的は達成できたと言える。しかし、CO_2の漏れが軽減しなかった場合には、研究計画の変更が必要となる。現在栽培しているPGR5過剰発現体は、強い強光ストレス下でも葉の緑色が濃く、過剰な光エネルギーの消去機構が増強されている可能性が高い。よって、弱光下におけるCO_2の漏れが軽減しなかった場合の対応策としては、弱光、乾燥、低CO_2など、様々なストレス条件下においてPGR5過剰発現体を栽培し、光合成における役割について不明な点が多いPGR5の機能について詳細に解析し、論文としてまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)