2010 Fiscal Year Annual Research Report
森林性野ネズミの貯食活動が樹木の分布拡大・更新に果たす役割
Project/Area Number |
10J05926
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 麻美 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遺伝解析 / 森林更新 / 生命表解析 / 貯食活動 / 野ネズミ / マテバシイ |
Research Abstract |
自然条件下において稚樹が母樹からどのように分布しているのかを明らかにするため、マテバシイのマイクロサテライトマーカー10座を用いて常緑広葉樹林内のマテバシイ母樹52個体とスギ人工林内で採取した堅果174個の親子解析を行ったところ、174個中23個(13.2%)の堅果は母樹特定ができた。堅果は単一母樹から様々な場所へ、また複数の母樹から同一箇所へと運搬されており、平均親子間距離は30.3±23.1(SD)mで、0~97.1mの範囲で運搬されていた。堅果は比較的長距離である50m以上の運搬もされており、自然条件下において野ネズミが種子散布者として役割を果たしていることが明らかになった。また、堅果落下から実生定着までの運命を明らかにするため、1995年~2008までの14年間に生産されたマテバシイ堅果の生命表を作成した。その結果、堅果は落下ステージ~貯食ステージで多くが死亡することが明らかになった。これらのステージにおける死亡要因の中で、野ネズミによる堅果捕食が堅果生産から実生定着までの死亡率の変動に深く関わっていた。結果として堅果が豊作で野ネズミの生息数が少なかった1999年、2003年、2007年でマテバシイは多く定着し、野ネズミは種子散布者として貢献していたが、それ以外の年ではマテバシイの更新の可能性は無いか極めて低く、種子捕食者としての役割の方が大きいということが明らかになった。これらの結果は、遺伝実験によって、また長期的な調査研究によって得られ、野ネズミの貯食活動の森林更新に対する貢献度を総合的に検討するに当たって非常に重要な結果であると言える。
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