2010 Fiscal Year Annual Research Report
抑うつ傾向の強く,唾液中コルチゾールが高値を示す者に対する注意に対する訓練の効果
Project/Area Number |
10J05955
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
津村 秀樹 早稲田大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 抑うつ / コルチゾール / 注意バイアス / 認知行動療法 |
Research Abstract |
うつ病においては高濃度コルチゾールが認められ、コルチゾールが抑うつ症状の形成に因果的にかかわっていると想定されている。コルチゾールとは副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンであり、ストレッサーに反応して、分泌が促進されることからストレスホルモンとして知られている。従来の研究においては、コルチゾールが抑うつ症状を強めるメカニズムは明らかとなっていなかったが、本年度実施された研究によって、心理的ストレッサーに対するコルチゾール反応は、抑うつ関連刺激に対する注意バイアスを強めることで、抑うつ症状の形成に関与することが示された。この結果から、高濃度コルチゾールを伴う抑うつに対しては、注意バイアスを変容する訓練が有効であると考えられる。そこで、高濃度コルチゾールを伴う抑うつに適する介入技法を明らかにする目的で、これまで開発されてきた注意バイアスに対する心理学的介入の効果研究のレビューを行った。その結果、注意バイアス修正訓練(MacLeod et al., 2002)が高濃度コルチゾールを伴う抑うつに効果を示す可能性があることが示された。 抑うつに対する代表的な心理療法として、認知療法が有効であるが、高濃度コルチゾールを伴う抑うつにおいては、認知療法の効果が低いことが示されている。本研究は高濃度コルチゾールを伴う抑うつにおいて、コルチゾールが症状形成に関与するメカニズムを明らかにし、さらに有効と考えられる具体的な介入技法を示唆する点で、今後の効果研究につながる基礎的知見となると考えられる。
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