2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J05973
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
阿部 順紀 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 血管形成 / 力学的因子 / 未分化細胞 / マイクロ流体デバイス / 再生医療 |
Research Abstract |
本研究の目的は、工学的観点から再生医療分野へ貢献するために、臓器再生の実現に向けた3次元血管形成の制御手法を見出すことである。臓器再生を実現するためには、再生組織内へ酸素や栄養を供給する血管を形成する必要がある。特に、再生された3次元組織中に深く侵入するような3次元血管様構造を形成させる必要がある。しかしながら、血管形成の過程は非常に複雑であるため、血管形成の制御因子は未だ不明な点が多い。近年、血流に起因する力学的刺激要因が血管形成に重要な役割を果たしていることが知られてきた。そこで本研究では、まず3次元血管形成モデルに異なる流れ(定常流と拍動流)を負荷可能なマクロ流体デバイスを構築し、流れが血管形成時の細胞動態に及ぼす影響を調査した。その結果、拍動流と比較し、定常流が毛細血管様構造の形成を促進させ、安定的な形成過程を経ることが分かった。また、血管形成を制御する上で重要なその他の因子として、血液中の未分化な前駆細胞が旺盛な増殖能力を持ち、血管形成に寄与することも知られている。しかしながら、この前駆細胞の有用性や安全性の評価のためには前駆細胞の動態メカニズムの解明が必要不可欠である。そこで、シンガポール国立大学の研究機関であるSingapore-MIT Alliance for Research and Technology Centre(SMAET)のMEMS技術を活用し、マクロ流体デバイスの実験手法をマイクロ流体デバイスに応用した。ハイスループットなマイクロ流体デバイスを用い、厳密に制御された培養環境下にて血管形成を実現するための実験を行なった。その結果、流れ刺激と未分化細胞使用による血管形成の促進に成功した。現在、この細胞動態の検証を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究実施計画内容を研究成果としてまとめ上げ、現在投稿論文の原稿を執筆中であり、近日中に投稿する予定である。また、平成24年度の研究計画に含まれる流れ刺激と未分化細胞による血管形成の研究にも着手しており、今後の成果が期待できるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度の研究成果である流れ刺激による血管形成の制御手法を用い、よりミクロな流体システムと未分化細胞を組み合わせたシステムを開発することである。特に、新たなマイクロ流体デバイスの開発には、MEMS技術を熟知している海外の大学との連携が不可欠である。その後は、血管形成メカニズムの解明に貢献するため、血管が形成される過程を共焦点レーザー顕微鏡により時空間的に観察可能なシステムを構築し、解析することが主な研究課題である。
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