2012 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半における「チベットの領域」問題の形成--東チベットを中心に
Project/Area Number |
10J06071
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
小林 亮介 財団法人 東洋文庫, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | チベット / 中国 / イギリス / シムラ会議 / 清朝 |
Research Abstract |
平成24年度の研究活動には,計画以上の成果と進展があったといえる。まず,平成23年12月に行われた辛亥革命百周年記念東京会議にて報告した内容を論文としてまとめた。これは査読を経た上で,「辛亥革命期のチベット」辛亥革命百周年記念日本会議組織委員会編『総合研究辛亥革命』岩波書店、2012年として公刊された。本論文では,20世紀の中国・チベット関係を規定した領域画定問題の淵源が辛亥革命前後の政治変動に由来することを明確に指摘し,中国近代史・チベット近代史に跨がる論点を多く提示した。 また,前年度に引き続き,5月から6月にかけて,再びインドのデリー及びダラムサラにおける調査活動に従事した。デリーの国立公文書館(NAI)では,英領インド政府のチベット政策に関わる公文書が所蔵されており,またダラムサラのチベット文献図書館(LTWA)には,チベット亡命政府が管理するチベット語文献が保存・公開されている。いずれの文書館においても,前年度の調査を踏まえ,20世紀初頭の清朝崩壊前後におけるダライラマ政権と英領インド政府の文書往来に着目しつつ,一次史料の調査・収集を継続した。また,9月に神戸で開催された国際若手チベット学者会議(ISYT-2012)では,イギリス・中国・チベットの各代表が清朝崩壊後のチベットの政治的地位を討議したシムラ会議(1913-1914)をとりあげ,インドにて調査・収集したチベット語外交史料の検討を踏まえ,当時のダライラマ政権の外交政策に関する報告を行った。 平成24年度は特別研究員採用の最終年度であったが,当初の計画に応じて20世紀初頭の領域問題に関する研究を遂行したのみならず,チベットの政治的地位をめぐる当時の外交交渉についての考察にも着手し,今後の新たな研究テーマの展望を開くことができたといえる。
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