2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J06392
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西井 奨 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 西洋古典学 / ラテン文学 / オウィディウス / 書簡文学 / ギリシア神話 / オウィディウス『名高き女たちの手紙』 |
Research Abstract |
本研究は、オウィディウスの作品の神話を題材とする詩作の特質を明らかにすることを目指すものである。本年度は、ギリシア神話の登場人物の手紙という形式の詩である『名高き女たちの手紙』を主要な考察対象とし、邦訳を作成しながら研究を進めた。第13歌「ラーオダメイアからプローテシラーオスの手紙」に関して、作中の「夢」と「像」のモチーフについて手紙の書き手であるラーオダメイアの視点からの分析を加え、これら両モチーフが夫プローテシラーオスの生死への彼女のアンビヴァレントな心理を描写するのに巧みに用いられていることを示した。この研究成果ついては京都大学西洋古典研究会例会・日本西洋古典学会第61回大会で口頭発表し、論文として『西洋古典学研究』第59号に発表した。また第10歌「アリアドネーからテーセウスへの手紙」に関して、テクスト上問題となっている箇所について検討を加え、W写本に基づく読みを支持するための新たな知見を示した。この研究成果については第9回フィロロギカ研究集会で口頭発表し、論文として『フィロロギカ-古典文献学のために』第6号に投稿中である。また第12歌「メーデイアからイアーソーンへの手紙」に関して、「炎」についての表現が「恋する乙女」としてのメーデイアと「復讐の魔女」としてのメーデイアを巧みに結びつけていることを示した。この研究成果についてはギリシア・ローマ神話学研究会第4回講演・研究発表会で口頭発表し、論文として大阪大学大学院文学研究科共同研究報告書に寄稿した。
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